eぶらあぼ 2022.1月号
101/125

98CDハイドン:交響曲集 Vol.13/飯森範親&日本センチュリー響PIAZZOLLA/宮田大舞踏への誘いざない/栗原麻樹イントラーダ/長谷川智之ハイドン:交響曲第94番「驚愕」・第1番・第64番「時の移ろい」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ピアソラ:鮫、言葉のないミロンガ(三浦一馬編)、タンガータ、悪魔のロマンス、アレグロ・タンガービレ、ツィガーヌ・タンゴ、ヴィオレンタンゴ、スール 愛への帰還、天使の組曲、アディオス・ノニーノ(以上山中惇史編)宮田大(チェロ) 山中惇史(ピアノ)ウェールズ弦楽四重奏団 三浦一馬(バンドネオン)チャイコフスキー(プレトニョフ編):演奏会組曲「くるみ割り人形」、同「眠れる森の美女」/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ栗原麻樹(ピアノ)オネゲル:イントラーダ/エネスク:レジェンド/ビッチュ:ドメニコ・スカルラッティの主題による4つの変奏曲/グラズノフ:アルバムブラット/ベーメ:ロシアの踊り、ナポリ風タランテラ/イウェイゼン:トランペット ヴァイオリンとピアノのための三重奏曲長谷川智之(トランペット/コルネット)佐野隆哉(ピアノ)近藤薫(ヴァイオリン)収録:2019年1月、いずみホール(ライブ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00763 ¥3520(税込)日本コロムビアCOCQ-85532 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-7270 ¥3080(税込)妙音舎MYCL-00006 ¥3520(税込)「ハイドンマラソン」全ライブ録音第13弾。飯森範親はモダン・オケにおけるピリオド・アプローチで、通奏低音にチェンバロを加えて、日本センチュリー響から透明で清新な響きを引き出している。交響曲第94番「驚愕」は、冒頭から生き生きとして実に爽やかだ。展開部も充実してスピード感がある。緩徐楽章の聴き手を驚かすハイドン一流のユーモアも効果的であり、変奏も楽しげ。軽やかでメリハリのあるメヌエットも、華やかなトゥッティのフィナーレもとてもいい。第64番両端楽章の豊かな楽想の飯森の描き方が巧い。第1番は若きハイドンの才気が伝わって快い。全集の今後が楽しみだ。(横原千史)宮田大を中心に、今、クラシック界の最前線で活躍する人気奏者が結集して作ったピアソラ・アルバム。さすがのクオリティである。まず編曲(山中惇史、三浦一馬)。タンゴという基本フォーマットを踏まえながら、しゃれたハーモニー、グリッサンドなどをセンス良く織り交ぜたシンフォニックなアンサンブル作りで原曲を輝かせる。甘くとろけるようなサウンドから冴え切った空気感まで、ウェールズ弦楽四重奏団は変幻自在。三浦一馬がバンドネオンでエキゾティックに色づける。しかし何と言っても、最後までエネルギッシュに歌い続ける宮田の技のキレとタフネスぶりには刮目させられた。 (江藤光紀)栗原麻樹は、12年間にわたりフランスで学んだ“よく喋る赤髪ピアニスト”。華麗な演奏とラジオでのトークなど明るいキャラクターで人気を集めている。演奏も非常に雄弁で、軽快なタッチ、艶のある音色が魅力的だ。今回の「舞曲」をテーマとしたプログラムは、そんな彼女のピアニズムと非常に相性がいい。プレトニョフ編曲による「くるみ割り人形」と「眠れる森の美女」は、高い技巧はもちろん音色の多彩さも求められる難曲だが、栗原は各要素を立体的に浮かび上がらせ、楽曲の美しさや楽しさを伝えてくれる。「亡き王女のためのパヴァーヌ」では繊細であたたかい音色が印象的。(長井進之介)2017年からN響の首席奏者を務める名手・長谷川智之のソロ・デビュー・アルバム。20世紀を中心としたオリジナル作品が並ぶ、本格的内容となっている。全体に、N響首席ならではの強靭で幅広い音色と安定度抜群のテクニックが光っており、ナチュラルな表現と佐野隆哉の的確なピアノも相まって、安心して身を委ねることができる。なかでも技巧鮮やかで音色輝かしいベーメの小品がまず魅力的。さらに特筆すべきはイウェイゼンの三重奏曲で、トランペット、ヴァイオリン、ピアノの珍しい組み合わせが生み出す絶妙なサウンドと絡みが、清新な室内楽体験をもたらしてくれる。 (柴田克彦)SACDSACDCD

元のページ  ../index.html#101

このブックを見る