eぶらあぼ 2021.12月号
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50左より:山本一輝、三澤響果、菊野凛太郎、築地杏里ベートーヴェン弦楽四重奏曲【9曲】演奏会12/31(金)14:00(終演21:30頃) 東京文化会館(小)問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638 http://www.millionconcert.co.jpクァルテット・インテグラ(弦楽四重奏)ベートーヴェンはどの音にも必ず何か意味がある取材・文:林 昌英Interview 近年、弦楽四重奏界が活況を見せている。若手奏者たちによる団体が次々に結成され、それぞれが魅力的な演奏を展開し、聴衆の選択肢が増えているのだ。なかでも2015年結成ながら、深く刺激的な演奏で熱心なファンを獲得している、クァルテット・インテグラの活躍は顕著だ。19年のNHK Eテレ『ららら♪クラシック』に“ベートーヴェンを愛してやまない”団体として出演、鮮烈な演奏を披露したことも注目を集めた。山本一輝(ヴィオラ)「意図していなかった(番組での)紹介のされかたでしたが(笑)、結果的には良かった。ベートーヴェンはどの音にも必ず何か意味があるという信頼感があり、常に新しい発見があって楽しいです」三澤響果(第1ヴァイオリン)「やはりベートーヴェンは特別な存在で、外せないレパートリー。早く全曲を演奏会で弾きたいですね」 その彼らが大晦日の名物企画「ベートーヴェン弦楽四重奏曲【9曲】演奏会」に、出演3団体の一角として初登場する。「若い世代の常設の四重奏団に新しく頼みたい」という主催者による抜擢で、期待は相当に高い。耳の肥えた室内楽ファンが集まる公演だが、「自分たちの演奏は見失わずに新しいことができたら」と浮き足立たずに意気込む。菊野凛太郎(第2ヴァイオリン)「聴きに来られる方はいい人たちですよね(笑)。ベートーヴェンを1日で9曲聴くのは相当好きじゃないとできないこと。そういう皆さんの前で弾けるのは本当に嬉しいです」 今回担当するのは中期の傑作集「ラズモフスキー」3曲(第7番~第9番)。超の付く難曲ぞろいで、一気に弾くことは大きな挑戦となる。築地杏里(チェロ)「特別な作品で、かなりの精神力、体力が必要。それを3曲弾いてその世界に浸かるということは経験がないし、すごい一年の終わり方になりそうです(笑)」三澤「ラズモフスキーは完璧な作品。プレッシャーもありますけど、3曲弾くことで新しい境地を体験できそうで、とても楽しみです」 全員20代、「ひとりが引っ張るという音楽のつくり方はしない」という4人は関係も良好、笑いが絶えない。「世界に通用するクァルテットを目指す」ために、「ずっとこの4人で、たくさんの作品を弾いていきたい」と息の長い活動にしていくことを強調する。山本が“良いプログラミング”について語ったことばも印象深い。山本「聴く側はちょっと大変、ぼくら弾く側はすごく大変、というものがいいと考えています。少しだけ普通じゃないプログラムで、音楽界を0.1ミリでも前に進められれば」 本稿執筆直後、バルトーク国際コンクール優勝との吉報が入った。ミリ単位なんて遥かに超える彼らの活躍、今後も楽しみでならない。樋口達哉のオペラ《道化師》憧れのカニオ役に初挑戦、渾身の演技に期待文:室田尚子 二期会を代表するトップ・テノール樋口達哉。リリックな声を持ち味としてキャリアを積み重ねてきたが、近年、声が太く、ドッシリとしてきた。そんな変化に対応して徐々にヴェリズモのレパートリーを充実させ、たどり着いたのがレオンカヴァッロ《道化師》だ。2018年に自身がプロデュースする「樋口達哉のオペラ」を発足、第1弾としてプレ・コンサートを上演。そして22年1月に《道化師》全曲上演が行われる(本来は20年に行われるはずだったのだがコロナ禍のために延期された)。2022.1/29(土)15:00 紀尾井ホール問 二期会チケットセンター03-3796-1831 https://tatsuyanoopera.com樋口達哉 ©Yoshinobu FUKAYA/auraY2 樋口は《道化師》のカニオを歌うのが「長年の夢」と語っていた。妻に裏切られながらも道化役で舞台に立たなければならない悲哀、そして逆上の結末を、歌い手としては円熟期に入った樋口がどう演じるのか。相手役のネッダに佐藤美枝子、狂言回しのトニオに豊嶋祐壹らキャスト陣も実力派揃い。佐藤正浩指揮のザ・オペラバンド・アンサンブルがバックを支える。岩田達宗の演出も楽しみだ。

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