eぶらあぼ 2021.12月号
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47歌謡曲の歩いて来た道… クラシック VS 歌謡曲浅草オペラからタケミツ、昭和の名曲まで文:藤原 聡 田谷力三や藤山一郎の歌う〈恋はやさし野辺の花よ〉も今は昔、とはいえ石川さゆりや白鳥英美子、秦基博らによって歌われた同曲を耳にした方は多いと思う。浅草オペラがスッペの《ボッカチオ》のアリアを歌謡曲風にアレンジし、それが人口に膾炙して多様なカバーバージョンが生まれることにより、さらに若い世代にもその魅力が広まる。日本人なら誰もが知る歌。〈女心の唄〉の知名度や人気にしても浅草オペラの功績は大きかろう。 あるいは團伊玖磨と武満徹。この両12/8(水)18:30 川口リリア 音楽ホール問 リリア・チケットセンター048-254-9900https://lilia.or.jpアンサンブル・オールウェイズ作曲家、言わずもがな「クラシック(現代)音楽」の作曲家として認識されているが、前者の〈花の街〉、後者の〈死んだ男の残したものは〉は「歌は世につれ~」を地で行く一度聴いたら忘れられない唱歌あるいはポップソングの傑作。 歌謡曲とクラシックの遠くて近い関係性に納得した後は〈知床旅情〉や〈いい日旅立ち〉などの文字通りの「昭和歌謡」を堪能。精鋭集う「アンサンブル・オールウェイズ」(声楽アンサンブル)がそれぞれをじっくりと味わわせてくれること請け合いだ。第47回日本ショパン協会賞 受賞記念コンサート 伊藤順一 ピアノリサイタル11/29(月)19:00 すみだトリフォニーホール(小)問 湘南クラシックアーティストパラダイス  0467-24-5695https://shonan-cap.comSACDハイブリッド『プロフォンド』アールアンフィニMECO-1068 ¥3300(税込)12/8(水)発売©Fukaya Yoshinobu伊藤順一(ピアノ)ショパンとフレンチの味わい深いデビューCD誕生取材・文:長井進之介Interview 伊藤順一は、東京藝術大学を経てエコール・ノルマル音楽院、パリ国立高等音楽院伴奏科、そしてリヨン国立高等音楽院ピアノ科で学んだピアニスト。透明感のある、美しく多彩な音色が魅力的だ。シャトゥ、ステファノ・マリッツァ、ニースなどの国際コンクールにて第1位、さらに第4回日本ショパンコンクールにおいても第1位を受賞してきた伊藤が、満を持してデビュー盤となる『プロフォンド』をリリース。聴いた瞬間、心に訴えかけてくるメッセージ性の強い伊藤の演奏を反映したタイトルである。 「ずっと愛奏してきたショパン、そしてフォーレにラヴェル、ドビュッシーと、フランスを代表する作曲家の作品を選びました。基本的には“これを入れたい!”というものを弾かせていただきましたが、やはりデビュー盤ということで皆様に楽しんでいただけることも意識した選曲です」 プログラムの中で印象的なのはショパンのマズルカが4曲収められていることである。マズルカはショパンの作品の中でも特に難しいものの一つ。しかし伊藤の演奏は舞曲の自然なステップとともに、風景が見えてくるような“鮮やかさ”、心に語りかけてくるものがある。 「マズルカは少し弾き方を変えると同じ3拍子のワルツになってしまったり、ドラマティックなバラードになってしまうので、本当に難しいです。ただ、ショパンの他のジャンルにはないものがマズルカなんだ、と考え色々なことを試していくことで、自然と自分なりのものができてきました。また昨年見た『ショパン展』でポーランドの農村風景の絵画にたくさん触れる機会があり、そこからもインスピレーションを受けました。マズルカには都会的なワルツにはない“土臭さ”があるのです」 フランスで約8年とかなり長く学んだ伊藤。どのような影響を受けてきたのだろう。 「メロディとハーモニーの美しさを重視して自由に音楽を作っていく方が多いのですが、もっと自由に音楽を楽しめるようになりました。また、パリでは伴奏科に行きましたが、そこでオーケストラのスコアリーディングを学べたことは、様々な楽器の音色を想像して演奏することに大いに活かせていると思います」 11月29日には、すみだトリフォニーホール小ホールでショパンのスケルツォとバラードの全曲演奏という重量級のプログラムに取り組む伊藤。今後はさらに音色の深み、重さを出すためブラームスなどドイツものにも挑戦したいという。進化し続けるピアニズムに注目していきたい。

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