eぶらあぼ 2021.12月号
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44高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団注目の親子共演と、英国ゆかりの名曲たち文:江藤光紀第348回 定期演奏会2022.1/15(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 東京シティ・フィルの1月定期では常任指揮者の高関健がイギリスゆかりの2曲を聴かせてくれる。 まずブリテンのオペラ《ピーター・グライムズ》より「4つの海の間奏曲」。原作はある漁師と地域コミュニティとの間に起きる悲劇で、海が全編に渡って重要な役割を果たす。「4つの海の間奏曲」は幕間に置かれた間奏曲を集めた一種の組曲で、夜明けから嵐まで、海のみせる様々な表情を活写している。 後半は交響曲第3番「スコットランド」。作曲者のメンデルスゾーンは初めてスコットランドを旅行した際にこの国の自然や風景に感化され、「フィンガルの洞窟」などの名作を残している。本作も完成はずっと後のことになるが、この旅行の際に着想された。 今回のコンサートにはもう一つ、大きな見どころがある。2曲の間に挟まれたラロ「スペイン交響曲」でヴァイオリン独奏を務める戸澤采紀は、史上最年少の15歳で日本音楽コンクールに優勝したが、当時から肝の据わった堂々たる表現が話題を呼んだ。その後ドイツに渡り、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクールで最高位に入賞するなど、現在も進境著しい。選曲は本人の希望とのことだが、がっちりとした管弦楽を向こうにスペインの魂を情熱的に歌う大作にチャレンジしてきたあたりに、伸び盛りの戸澤の充実ぶりが窺える。 実は、彼女は東京シティ・フィルのコンマス戸澤哲夫の愛娘でもある。独奏のパッションや色彩感を、オーケストラを率いる父はどんな風に支え、盛り立てていくのかーー親子共演の行方にも注目したい。銀座ぶらっとコンサート #165 ハルモニア・アンサンブルのクリスマス12月の銀座に響く多彩なハーモニー文:東端哲也12/13(月)13:30 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp 平日の昼下がりのお楽しみ、王子ホールの名物企画「銀座ぶらっとコンサート」12月には、福永一博が指揮を務めるプロフェッショナルの室内合唱団「ハルモニア・アンサンブル」が登場。2020年に同企画の人気シリーズである、作曲家・ピアニストの加藤昌則が店主を務める“カフェ・ギンザ”に出演し、童謡から昭和~平成の歌謡曲まで、日本の名曲たちを披露して聴衆を魅了したのも記憶に新しい。フランスをはじめとする欧州のコンクールやフェスティバルでその実力を認められているだけに、今回のクリスマス・プログラムでは海外の作品を中心に美しいハーモニーを聴かせてくれるはず。 モーツァルト〈アヴェ・ヴェルム・コルプス〉やメンデルスゾーン〈天にはさかえ〉など厳かなクラシカル系から、喜びと幸福感に満ち溢れたプーランク〈今日、キリストはお生まれになられた〉やアダン〈オー・ホーリー・ナイト〉、そして20世紀前半にスウェーデンの教会でオルガニストを務めていたグスタフ・ヌードクヴィストの〈クリスマス、輝くクリスマス〉や、フィリピン出身の現代音楽作曲家ジョン・オーガスト・パミントゥアンのスピリチュアルな〈おお、大いなる神秘〉まで、時代を超えたラインナップが嬉しい。〈赤鼻のトナカイ〉や〈ジングル・ベル・ロック〉、小林亜星〈あわてんぼうのサンタクロース〉などのポップな楽曲も取り揃え、鍵盤ハーモニカや鳴り物入りの華やかなステージにも大いに期待したい。ハルモニア・アンサンブル戸澤采紀 ©SmileStyleStudio高関 健 ©上野隆文福永一博

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