eぶらあぼ 2021.12月号
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41佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団次期音楽監督がダイナミックに描き上げる傑作2篇文:江藤光紀すみだクラシックへの扉 #042022.1/21(金)、1/22(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 音楽の本場ウィーンで活躍する佐渡裕は、国内でも絶大な支持を誇っている。これまでは関西圏との結びつきが強かった印象だが、2022年4月には新日本フィルのミュージック・アドヴァイザー、翌年4月からは同楽団音楽監督への就任が発表され、いよいよ首都圏のオケとの本格的な協業が始まる。1月の「すみだクラシックへの扉」は、両者の今後を占う重要な前哨戦となりそうだ。 この機会に佐渡が選んだのが「シェエラザード」だ。オーケストレーションの大家として知られたリムスキー=コルサコフの代表作で、管弦楽の醍醐味を味わえる。女性嫌いの王の怒りを鎮めるために、毎晩面白い物語を語って聞かせたという『アラビアンナイト』のシェエラザード妃。独奏ヴァイオリンが描き出すその可憐な主題が、楽章ごとに異なるエピソード、情景をつないでいく。実は佐渡は2017年、ウィーン交響楽団の本番数時間前にこの曲の代役を頼まれ、見事な名演を聴かせたという。この曲の情景喚起力は、なるほど佐渡のダイナミックな芸風と相性がよさそうだ。 前半にはニュウニュウが登場し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を披露。09年にサントリーホールにデビューした時にはまだ12歳。当時からテクニックはもちろんのこと、打鍵にはしっかりとした圧があったが、かつてのあどけない少年もいまやシャープな顔立ちの青年に。この年代は心身ともに急激に変化していく時期でもある。旧知の仲の佐渡のサポートのもと、どんな「皇帝」ぶりを発揮してくれるのか、こちらも興味は尽きない。曽根麻矢子(チェンバロ) J.S.バッハ連続演奏会《BWV》Ⅲ イギリス組曲第2番、第3番、第6番デビューから30年のいま、ふたたび相対するバッハの傑作文:飯尾洋一2022.3/22(火)19:00 Hakuju Hall問 チケットスペース03-3234-9999 https://mayakosone.com 日本を代表するチェンバロ奏者、曽根麻矢子が5年間で全10回にわたるJ.S.バッハ連続演奏会《BWV》に取り組んでいる。会場はHakuju Hall。2021年に「ゴルトベルク変奏曲」でスタートして、25年にふたたび「ゴルトベルク変奏曲」に帰ってくるという一大プロジェクトだ。 そのシリーズ第3回となる公演が3月22日に開催される。曲はイギリス組曲第2番イ短調、第3番ト短調、第6番ニ短調。全6曲のイギリス組曲から3曲が厳選された。言うまでもなく、バッハの組曲はいずれも極め付きの傑作ばかり。なかでも凛とした形式美と深い味わいに満たされたイギリス組曲を好む人は多いのではないだろうか。すべて短調作品が並んだが、3曲だけを選ぶのであれば、滋味豊かさという点で納得のラインナップでは。 そしてイギリス組曲は曽根にとって特別な作品でもある。1991年、フランスの名門レーベルERATOから世界デビューを果たした際のアルバムが、イギリス組曲集だった。このデビューアルバムから約30年を経て、同曲で曽根の今の姿を伝える。 使用楽器はスイス在住の製作者デヴィッド・レイが曽根のために長い時間をかけて製作したという18世紀フレンチモデルのチェンバロ。白を基調として明るく色彩的なデザインが施された楽器で、きらびやかな音色とともに華やかな印象を与える。Hakuju Hallの快適な空間にいっそうの彩りを添えてくれることだろう。©Yuji Horiニュウニュウ ©Chris Lee佐渡 裕 ©Peter Rigaud

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