34東京文化会館《響の森》Vol.49 ニューイヤーコンサート2022ロシアとフランスの名曲で彩る新年の幕開け文:林 昌英2022.1/3(月)15:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 毎年1月3日の恒例となっている東京文化会館主催《響の森》シリーズの「ニューイヤーコンサート」が、2022年にも無事開催の予定。明るい一年への希望を感じられる公演になりそうだ。 その明るさは、まずプログラムから感じられる。快速で楽しいグリンカ《ルスランとリュドミラ》序曲。名旋律とロマンあふれるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。オーケストラの華やかな魅力を満喫できるビゼー「アルルの女」組曲第1番・第2番。ロシアとフランスの心躍る名曲ばかりで、コンサートの喜びに安心して浸れる。 そして、出演者にも明るい話題が目立つ。指揮者は飯森範親。国内各地の楽団に共演を重ねる、いま最も脂ののったマエストロだ。山形交響楽団や日本センチュリー交響楽団ほかのポストに加えて、21年には東京ニューシティ管弦楽団ミュージック・アドヴァイザー(次期音楽監督)、22年には山響桂冠指揮者にも就任。新しい地位での活躍が期待される飯森にとって、今後を占う重要な新年公演となる。ピアノは萩原麻未。ジュネーヴ国際コンクール優勝、香り豊かな音色と表現が魅力の名手で、出産を経て先ごろ第一線に復帰したばかり。いま新たな境地にある萩原の表現を、人気協奏曲で味わいたい。オーケストラは例年通り東京都交響楽団。音楽監督の大野和士との契約が26年まで延長され、22年ラインナップも非常にユニークで意欲的なプログラムが並び、ますます意気が上がる年になる。彼らの熱い演奏で、清新な一年の始まりを。小山実稚恵の室内楽 第5回小山実稚恵 & アルティ弦楽四重奏団 & 池松 宏~シューベルトの「ます」絆も深き名手たちがピアノ五重奏の最高傑作を紡ぐ文:柴田克彦12/4(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 日本を代表するピアニストが腕を振るう「小山実稚恵の室内楽」の第5回が、アルティ弦楽四重奏団と池松宏(コントラバス)を迎えて開催される。このところの小山は充実一途。2019年からのシリーズ『ベートーヴェン、そして…』やベートーヴェンの後期ソナタのCD等で披露している演奏は、自然体にして深く、繊細なニュアンスと情感に溢れている。これまで室内楽奏者としても鋭敏な感性と多彩なテクニックで音楽を輝かせてきただけに、充実の今聴かせるアンサンブルへの期待は限りなく大きい。 アルティ弦楽四重奏団は、豊嶋泰嗣、矢部達哉(ともにヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、上村昇(チェロ)と実力者揃い。1998年の結成以来、名手4人の個性を絶妙に調和させた緻密かつ表情豊かな演奏で評価を高めてきた。2016年にブラームスなどのピアノ五重奏曲で共演し、本シリーズ誕生のきっかけを生み出すなど、小山との相性も抜群だ。池松は、都響の首席奏者を務めるほか様々な楽団で活躍する日本屈指のコントラバス奏者。小山も「一音一音に魂が宿っている」と賞賛を惜しまない。 今回のコラボゆかりのブラームス作品と、コントラバス入りのシューベルト「ます」が並ぶプログラムは、形態の異なる五重奏曲の看板曲を一挙に堪能できる極め付けの内容。ともにピアノがソリスティックな活躍をするので小山の妙技も満喫できるし、丁々発止のやりとりや美しく融合するアンサンブルも存分に味わえる。深い共感と信頼で結ばれた演奏家たちが奏でる、音楽への悦びに溢れた本公演を、ぜひ生体験したい。左より:小山実稚恵 ©Hiromichi Uchida/アルティ弦楽四重奏団/池松 宏萩原麻未 ©Akira Muto飯森範親 ©山岸 伸
元のページ ../index.html#37