30鈴木雅明(指揮) バッハ・コレギウム・ジャパン《第九》透明度の高い響きがベートーヴェンのメッセージを伝える文:片桐卓也12/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp 年末に「第九」の公演があるのは当たり前、と誰もが思っていた。しかし、2020年はすっかり様相が変わって、中止のニュースが次々と発表され、どこか宙ぶらりんな年末になりそうだった。そんな時、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が「第九」公演を開催するというリリースが気持ちをパッと明るくしてくれた。その演奏に接した時、あらためて「第九」という作品の持つ確かな重さを感じたと同時に、ピリオド楽器オーケストラの響きと、バッハの声楽作品で鍛え抜かれた合唱が作り出す晴れやかなアンサンブルの開放感を味わい、新しい「第九」の魅力を発見した思いがした。 そして、今年もBCJが「第九」公演を開く。4人のソリストは、中江早希、藤木大地、宮里直樹、大西宇宙とがらりと変わったが、いずれも国内外で活躍する歌手で、その実力は音楽ファンの間でも注目の的である。もちろんオーケストラ、合唱はBCJが担い、鈴木雅明が全体をリードする。 この「第九」公演を聴くべき理由はたくさんあるが、すでに50歳を過ぎ、人生の最終コーナーを回っていたベートーヴェンの頭脳に去来していた様々なアイディアの断片が、この巨大な作品のそこここに煌めいており、単にひとつの作品を聴くという以上の体験をもたらしてくれるという点が大きいのではないかと思う。そして、それを21世紀において再現する時に、演奏家が常に突きつけられている努力もまた“聴きどころ”のひとつだろう。今年も楽しみな年末が巡ってくる。中江早希Quartet Plus ウェールズ弦楽四重奏団+クァルテット・エクセルシオ賞賛博す弦楽四重奏団が、稀少にして魅惑の融合文:柴田克彦2022.2/1(火)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp https://kioihall.jp 日本を代表する2つの弦楽四重奏団の共演! 当初2021年4月に予定されていた興味深い公演がついに実現する。かたやウェールズ弦楽四重奏団は、実力派オーケストラ奏者が中心。08年ミュンヘン国際音楽コンクールの第3位受賞以来各地で活躍し、緻密かつ雄大な音楽で魅了している。かたやクァルテット・エクセルシオは、1994年の結成以来第一線に立ち、年60回以上の公演を行っている日本では稀有な常設四重奏団。むろんそれゆえの一体感ときめ細かな音楽が魅力だ。本公演は2017年から彼らが交代で出演してきた紀尾井ホールの「Quartet Plus」の最終回。これまで個々にゲストを迎えてきたが、いよいよ両者が合体した弦楽八重奏が披露される。 演目も妙味十分だ。最初はエクセルシオがモーツァルトの弦楽四重奏曲第7番K.160(159a)を演奏。これ実は第1楽章の主題が有名なディヴェルティメントK.136の終楽章の主題と同じという洒落た選曲でもある。次いでウェールズがウェーベルンの「弦楽四重奏のための緩徐楽章」を演奏。これも実は作曲者のイメージとは異なる絶美の抒情的音楽で、聴けば誰しも感嘆必至だ。次からは八重奏が続く。武満徹の「ソン・カリグラフィⅠ」とショスタコーヴィチの「スケルツォ」(op.11より)は、先鋭的音楽における静と動の対比の趣。特に不協和音が突進する後者は滅法面白い。そして最後は八重奏曲の代名詞たるメンデルスゾーンの名作。この曲は流麗かつ爽快な音楽にひたすら酔いしれればそれでいい。 トップ四重奏団の個性と8本の重層的サウンドを多彩なプログラムで堪能できるこの貴重な機会を、ぜひお見逃しなく!藤木大地 ©hiromasa宮里直樹 ©深谷義宣 auraY2大西宇宙 ©Simon Pauly鈴木雅明 ©Marco Borggreveクァルテット・エクセルシオ ©小倉直子ウェールズ弦楽四重奏団 ©Satoshi Oono
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