29ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ポーランドの旋律が響く重厚なサウンド文:山田治生第696回 定期演奏会 12/4(土)18:00 サントリーホール川崎定期演奏会 第84回 12/5(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 東京交響楽団音楽監督のジョナサン・ノットが10月の演奏会に続いて、12月の定期演奏会も指揮する。10月の演奏会では、デュティユーの交響曲第1番とモーツァルトの「レクイエム」を組み合わせた20世紀+18世紀プログラムで、「レクイエム」のなかにリゲティの無伴奏合唱曲「ルクス・エテルナ」を挿入して、聴き手のイマジネーションを刺激した。12月の演奏会では、ブラームスのピアノ協奏曲第2番とルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲という、20世紀音楽とブラームスを組み合わせたプログラムが披露される。 20世紀ポーランドを代表する作曲家の一人であるルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」(1954)は、バルトーク以降に書かれた同名の作品のなかで最も演奏機会の多いものに違いない。ルトスワフスキは、ワルシャワ・フィルからの委嘱に応えて、ポーランドの民謡を採り入れながら、オーケストラの能力を十分に発揮するような、合奏協奏曲的な作品を書いたのであった。ノットのもと、若く優秀な奏者も加わり、ますます演奏能力を高めている東響のヴィルトゥオジティ(妙技)を聴くには最適な作品であるといえるだろう。また、ノットの鮮やかな棒捌きも楽しみだ。シンフォニーにも匹敵する重厚で長大なこの作品では、ノット&東響の演奏にも注目したいものである。ジョナサン・ノット ©T.Tairadate/TSOフォーレ四重奏団結成25周年に組んだ特別なプログラム文:飯尾洋一12/9(木)19:00 トッパンホール 問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com他公演 12/7(火) トッパンホール (パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831) フォーレ四重奏団がトッパンホールに帰ってくる。常設のピアノ四重奏団は世界的にも珍しいが、1995年にドイツのカールスルーエ音楽大学で学んだメンバーにより結成されたフォーレ四重奏団は、昨年結成25周年を迎えた。かつてマルタ・アルゲリッチはフォーレ四重奏団について「彼らの演奏を聴いた人はだれもがもう一度聴きたくなる」と言ったが、その賛辞の通り、くりかえし聴きたくなる魅力を彼らが持っているからこその25周年だろう。 12月9日の公演のために彼らが用意したプログラムは、フォーレとブラームスの作品を組み合わせたもの。といっても、ひとひねりがあって、まずはフォーレの歌曲から「ゆりかご」「われらの愛」「月の光」が、D.ツェルナー編のピアノ四重奏版で演奏される。なるほど、作曲者の名を冠するピアノ四重奏団にとって、フォーレ作品のレパートリーの拡充は必須かもしれない。歌曲からピアノ四重奏への編曲の妙も楽しめる。 これに続いて演奏されるのがフォーレのピアノ四重奏曲第2番、そしてブラームスのピアノ四重奏曲第3番。19世紀後半にフランスとドイツでそれぞれ室内楽の傑作を残した大家による重厚な傑作を味わうことができる。緊密なアンサンブルが作品に込められた豊かなパッションと濃厚なロマンを引き出してくれることだろう。 また、12月7日の公演ではドヴォルザークのピアノ四重奏曲第2番とムソルグスキー(グルズマン&モメルツ編)の「展覧会の絵」が披露される。ピアノ四重奏版の「展覧会の絵」があるとは驚きだ。©Mat Hennek
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