eぶらあぼ 2021.12月号
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106CDCDCD武満徹・細川俊夫 声とギターの世界/大橋多美子&谷辺昌央ジョン・ウィリアムズ ピアノ・コレクション/アン・セット・シスニュー・ファゴット・レパートリー Vol.1 不思議な関係/ゲオルギ・シャシコフ千田悦子 ハープ・リサイタル 2021武満徹:「SONGS」より〈○と△の歌〉〈明日ハ晴レカナ 曇リカナ〉〈小さな空〉〈翼〉〈死んだ男の残したものは〉(以上渡辺裕紀子編)、〈小さな部屋で〉(北爪道夫編)/細川俊夫:「日本民謡集」より〈子守歌〉〈さくら〉、恋歌Ⅰ、南部牛追歌(声とギター版) 他大橋多美子(メゾソプラノ)谷辺昌央(ギター)ジョン・ウィリアムズ(山中惇史編):「ハリー・ポッター」シリーズより、「スター・ウォーズ」シリーズより、「シンドラーのリスト」テーマ、「アメリカン・コレクション」テーマ、「ジュラシック・パーク」エンド・クレジット、「フック」ネバーランドへの飛行 他アン・セット・シス【山中惇史 高橋優介(以上ピアノ)】テレマン:ソナタ ヘ短調/ボザ:レチタティーヴォ シシリエンヌとロンド/ミニョーネ:「ファゴット独奏のための16のワルツ」より/ヒンデミット:ファゴット・ソナタ/C.P.E.バッハ:無伴奏フルート・ソナタ イ短調(ハ短調によるファゴット編曲版)/タンスマン:組曲/ショーフ:2つの即興曲ゲオルギ・シャシコフ(ファゴット)田中ゆりあ(ピアノ)ルニエ:バラード第2番、ハープ ヴァイオリン チェロのためのトリオ/ラ・プレル:雨に濡れた庭/ピエルネ:即興風奇想曲/イベール:ヴァイオリン チェロ ハープのためのトリオ千田悦子(ハープ) 加藤えりな(ヴァイオリン) 渡邊方子(チェロ)コジマ録音ALCD-7268 ¥3080(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84127 ¥3300(税込)妙音舎MYCL-00009 ¥3300(税込)収録:2021年5月、東京オペラシティ リサイタルホール(ライブ)ナミ・レコードWWCC-7956 ¥2750(税込)武満ソングはシンプルだからこそ、ベテランの味わいがでやすいように思う。日本語の美しさが際立ち、言葉がメロディという翼を得て飛んでゆく。それからギター。高度な編曲をさりげなく聴かせるだけでなく、弾けたり湿ったりと音に表情がある。戦後の何もない時代の喜怒哀楽、生活のうるおいが浮かんでくる演奏だ。後半の細川作品は、民謡の編曲や和歌集に基づく歌曲で、長く引き伸ばされた言葉と音が、空間に静かに溶け込んでいく。そこに私たちの先祖が営んできた歴史の重みが、ほんのりと香り立つ。動と静を対比させた巧みな選曲にも導かれ、いつの間にか沈思黙考へと誘われていた。(江藤光紀)ピアニストで作曲家でもある山中惇史と高橋優介によるピアノ・デュオ「アン・セット・シス」がジョン・ウィリアムズ作品を録音――と聞くともともと華麗なオーケストレーションを持ち味とするこの作曲家の映画音楽をなぜ敢えてピアノに? と思うかもしれない。しかしこのCDでは、ピアノならでは、そして作曲家ならではの視点でそれら楽曲を編曲・再構成している。2台ピアノだからこその曲の構造の可聴化、各作品群の間に独自の間奏曲と自作曲を置いて全体を構成する、などは凡百のアレンジ集とは異なる演奏者の「意志」を感じさせ、表面的に華やかな演奏効果以外の側面に耳を向けさせられて秀逸だ。(藤原 聡)ブルガリア出身の名古屋フィル首席ファゴット奏者による初のソロ・アルバム。タイトルは曲名ではなく、自分と楽器の惹かれ合う関係を意味しているという。本人いわく、収録されているのは「すべてが『美しい曲』」。20世紀作品を主体とする変化に富んだ音楽が並んでおり、ファゴットが生み出す様々な景色を、まろやかな音色と滑らかなテクニックで満喫させてくれる。なかでも多様な魅力が詰まったボザの作品は聴き応え十分。ブラジルの作曲家ミニョーネのワルツ、C.P.E.バッハのソナタといった無伴奏作品のスムーズかつ表情豊かな演奏にも魅せられる。(柴田克彦)千田悦子は、第16回イスラエル国際ハープコンテスト第3位など国内外の登竜門で実績を重ね、ソロや室内楽で活躍する実力派奏者。今年5月に開いたリサイタルのライブ録音である当盤で、フランス近代のハープのためのソロ&室内楽作品を特集している。前半のソロ作品では、ルニエ「バラード第2番」やピエルネ「即興風奇想曲」の清冽な音色と、ラ・プレルの音画「雨に濡れた庭」での湿気を感じさせる音創りとのコントラストが絶妙。後半のアンサンブル曲では、スリリングさを孕んだやり取りが新鮮。単に「優雅」の一言では終わらない、ハープの奥深い魅力を掘り下げてゆく。 (笹田和人)CD

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