eぶらあぼ 2021.12月号
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102SACDCDCDブラームス:ドイツ・レクイエム/飯森範親&日本センチュリー響 他Rika Plays Fantaisie series 前奏曲/宮谷理香11月の夜想曲~新倉瞳 委嘱作品集(世界初演初録音)ヘルツォーゲンベルク:ピアノ4手連弾のための変奏曲全集/横島浩&篠田昌伸ブラームス:ドイツ・レクイエム飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団石橋栄実(ソプラノ)平野和(バスバリトン)ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団日本センチュリー合唱団J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番/ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ第1番/フランク:前奏曲 コラールとフーガ/ショパン:24の前奏曲宮谷理香(ピアノ)ファジル・サイ:11月の夜想曲~チェロと管弦楽のための/藤倉大:スパークラー~チェロのための/挾間美帆:組曲「イントゥー・ジ・アイズ」/佐藤芳明:2つの楽器のための2つのカノン/和田薫:巫~チェロと和太鼓のための 他新倉瞳(チェロ) 飯森範親(指揮) 東京交響楽団 塚越慎子(マリンバ) 佐藤芳明(アコーディオン) 林英哲(太鼓)ヘルツォーゲンベルク:ブラームスの主題による変奏曲 イ短調、変奏曲 ホ長調op.84・変ロ長調op.85・ニ短調op.86、ワルツ(第2集)、ノットゥルノ 嬰ヘ短調 ピアノ独奏のための篠田昌伸 横島浩(以上ピアノ)収録:2019年10月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4098 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00188 ¥3520(税込)収録:2020年3月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ) 他アールアンフィニMECO-1065 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-7269 ¥3080(税込)飯森範親は、ドイツ留学中にこのブラームスの「ドイツ・レクイエム」と出会い、ライフワークとして大切にしてきた。その思いは第1曲冒頭から伝わってくる。これがまた慰めに満ちて美しい。第2曲は無常観や運命を描く葬送の音楽であり、陰鬱さは神の啓示で大転換する。その対照の表現は見事だ。圧巻は第3曲と第6曲で、バリトン独唱で始まり壮大なフーガで終わる。この多様で精緻な音楽は、飯森の構築の中でも頂点を形成する。愛を歌う第4曲と第5曲もきれい。特に後者の石橋栄実の独唱は透明で神々しい。そして終曲の優しい慰めの音楽が余韻を長く引き伸ばす。感動的な名演だ。(横原千史)1995年の第13回ショパン国際ピアノコンクールで第5位入賞を果たして翌年デビュー。以降も多彩な才能を発揮して着実にキャリアを重ね、今年は各地で25周年記念リサイタルを成功させてきた彼女を象徴する好アルバム。コロナ禍を越えて未来へと向かう祈りのメッセージを“プレリュード”というキーワードに込め、源流である大バッハの平均律クラヴィーア曲集から、ロシア正教の聖歌が立ち上がるフーガで構成されたショスタコーヴィチ作品、教会音楽的なコラールを含むフランク作品を経て、バッハを信奉してやまなかったショパンの「24の前奏曲」で締める圧巻の“鍵盤音楽史”。(東端哲也)新倉瞳デビュー15周年記念アルバムは、5人の作曲家に新作を依頼、その初演ライブ録音を集めるという大胆なもの。サイの協奏曲の熱演は2020年3月に奇跡的に実現した公演、ほかは豪華共演者たちとの多彩な編成による21年1月公演の模様。流麗にして芯の強いチェロの音色と、新倉というアーティスト自身の魅力のなせる業だろう、聴きやすさと先鋭性を併せもつ快作ばかりで、各曲タイプが違うのに通底するものも感じられる。全編スタイリッシュながらオネゲルの一節による楽章が意味深な挾間作品、シンプルなカノンが深い感情を喚起する佐藤作品など、今後聴く機会が多くなりそうだ。(林 昌英)ブラームスとの夫婦ぐるみの交友で知られるヘルツォーゲンベルクのピアノ連弾のための変奏曲を集めたレアなアルバム。横島浩と篠田昌伸=珍しい作曲家2人のデュオが、丁寧かつ息の合った演奏を繰り広げている。こうした作品の録音は国内盤では類をみないとのことなので、資料的に貴重なのはもちろんだが、音楽自体が想像以上に魅力的。作風的にはブラームスの先を思わせるドイツ・ロマン派末期のテイストだが、内容はなかなか密度が濃く、ロマンティックな変奏曲op.85や同ニ短調のop.86には特に惹かれるものがある。これは新たな音楽を知る喜びも味わえる一枚だ。(柴田克彦)SACD

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