62クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団進化を止めない気鋭指揮者で聴く「カルミナ・ブラーナ」文:飯尾洋一第695回 定期演奏会 11/13(土)18:00 サントリーホール川崎定期演奏会 第83回 11/14(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 東京交響楽団の指揮台にクシシュトフ・ウルバンスキが帰ってくる。若き日のウルバンスキが東響に招かれた際は、リハーサル段階から作品を暗譜して臨むなど、オーケストラに鮮烈な印象を与えた。そして2013年から16年まで首席客演指揮者を務め、大きな成功を収めた。 若く優秀な指揮者にいち早く目をつけたのは東響の慧眼というほかない。しかし裏を返せば優秀な人ほどつなぎ留めておくのは難しいもの。ウルバンスキの活躍の場はどんどんと広がり、14年にはベルリン・フィルへのデビューも果たした。19年3月、久しぶりに東響に客演してショスタコーヴィチの交響曲第4番他を聴かせてくれたが、それからコロナ禍を経てこの11月、2年8ヵ月ぶりの共演がようやく実現することとなった。 プログラムはシマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番と、オルフの「カルミナ・ブラーナ」。シマノフスキはウルバンスキが力を入れる母国ポーランドの作曲家でもある。韓国出身の新時代のスター、ボムソリがソリストを務める。「カルミナ・ブラーナ」ではソプラノのアリーナ・ヴンダーリン、カウンターテナーの彌勒忠史、バリトンのビョルン・ビュルガーの独唱陣と新国立劇場合唱団、東京少年少女合唱隊が共演を果たす。パワフルな合唱は一大スペクタクルをもたらすことだろう。同時に、ウルバンスキが作品に新たな光を当ててくれるのではないかと期待している。クシシュトフ・ウルバンスキ ©Marco Borggreveトリトン晴れた海のオーケストラ 第10回演奏会 ベートーヴェン・チクルスⅤ「第九」豪華声楽陣も魅力、指揮者なしで作り上げる「第九」文:林 昌英11/27(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 中央区晴海に位置する第一生命ホールを拠点とする「トリトン晴れた海のオーケストラ」。2015年6月の発足以来、指揮者なしでポジティブなエネルギーを発散する快演を重ね、着実にファンを増やしてきた。その中心にいるのはコンサートマスターの矢部達哉。東京都交響楽団のリーダーである彼が柱となり、気心の知れたメンバーとともに、自発的かつ積極的な演奏を実現している。 18年からベートーヴェン・チクルスを開始、生誕250年の20年「第九」で楽聖と楽団の大きな節目に…となるはずだったが、新型コロナウイルスによる制限のため中止にせざるを得なかった(代わりに別演目で配信を行った)。その1年5ヵ月後となる今年11月、今度こそ「第九」が実現する。今回は第一生命ホール開館20周年、同楽団の公演第10回と、昨年とは違う節目も重なり、記念にふさわしい場となる。 公演事情とは別に、そもそも“指揮者なしの第九”自体が偉業といえる。偉大な9曲の到達点にふさわしい表現を約70分維持し、合唱団と4人の独唱者とも緻密なアンサンブルを実現し、その上で巨大な世界を構築しなければならない。もちろんメンバーも曲をかたちにするという次元で満足する気はないはずで、全員がアンテナを張り巡らしながら、その工夫を忘れるほどの熱気を見せてくれるはずだ。 独唱は澤畑恵美、林美智子、福井敬、黒田博、合唱は東京混声合唱団。ため息の出るような強力布陣がそろい、「晴れオケ」が2年越しで作り上げるベートーヴェンの神髄。永く語り継がれる公演になる。澤畑恵美林 美智子 ©Toru Hiraiwa福井 敬黒田 博矢部達哉 ©大窪道治
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