eぶらあぼ 2021.11月号
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57中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオリサイタルピアノの芸術Vol.6 ストラヴィンスキー没後50年11/18(木)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp 中井恒仁 & 武田美和子(ピアノデュオ)20世紀の古典をダイナミックに披露 取材・文:長井進之介Interview 日本を代表するピアノデュオである「中井恒仁&武田美和子」は、それぞれの技術にアンサンブル、レパートリーの拡大やプログラミングなど、つねに進化し続けながら、ピアノ・アンサンブルの魅力を多くの人々に伝えてくれている。昨年はオール・ベートーヴェンによるデュオリサイタルを、配信も活用して開催、大きな話題となった。今年はがらりとプログラムの趣向を変え、ストラヴィンスキーの「春の祭典」とバルトークの「2台ピアノと打楽器のためのソナタ」を演奏する。中井「今年はストラヴィンスキーの没後50年ということもあり、『春の祭典』をぜひ演奏したいと思ったのがはじまりです。この曲は2台ピアノで演奏されることも多いのですが、今回は連弾ということにこだわりました」武田「2人の奏者が1台のピアノを通して奏でる音の重なりをお聴きいただきたいです。さらにオーケストラのスコアからも音を足しながら、ピアノという楽器だからこそできる響きの可能性をお届けできたらと思っています」 「春の祭典」だけでもピアニストにとっては大きな挑戦ともいえる楽曲だが、そこにバルトークの難曲、「2台ピアノと打楽器のためのソナタ」が加わるのだから驚きだ。中井「ストラヴィンスキー、バルトークともに不協和な音も多くリズムも複雑ですが、その中から美しさが浮かび上がってきます。お客様と一緒にその“美”の瞬間を共有したいと思っています。また、“難しい”ということでひとくくりにされてしまいがちな2人の作曲家固有の世界観を表現して、それぞれの作品の魅力をお伝えしたいです」武田「どちらの作品も確かに複雑で激しい音楽ですが、一方でとても素敵なハーモニーや繊細さ、さらに人間の本能や魂に訴えかける、不思議な感覚もあります。またバルトークは作曲法に“黄金比”を取り入れた人で、どこか宇宙的なものを感じる美しさがあるので、こういった感覚を味わっていただけると、作品の見方もかなり変わってくると思います。ぜひ“怖がらず”に楽しんでいただけたら嬉しいですね」中井「バルトークの演奏にあたっては、まず“ぜひいつか共演を”と願っていた岡田全弘さんにお願いし、岡田さんの信頼が厚い齊藤美絵さんに加わっていただきました。難曲ではありますが、きっと私たちならではの演奏をお聴かせできると思います」 音そのものの魅力、そして重なり合う響きの魅力を存分に味わえるリサイタルとなりそうだ。中井&武田の創り出す美の世界にぜひ浸ってほしい。東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 嘉目真木子(ソプラノ)ドイツ音楽の系譜をさまざまな角度からひもとく文:室田尚子 ソプラノの嘉目真木子は、決して器用なタイプではない。オペラの舞台における活躍は多くの人が知る通りだが、天才肌でサラッとこなしてしまうというよりむしろ地道な努力を続けていくタイプ。そんな嘉目が、このところ目覚ましい成果を上げているのが歌曲のジャンルだ。様々な国の様々な言語の歌曲における確かな声のコントロールが、彼女の弛まぬ鍛錬を示している。 そんな嘉目が、東京オペラシティの「B→C」シリーズに登場(共演ピアニストは髙田恵子)。ドイツ音楽の中から「哲学者や思想家と作曲家がどのように結びついていたのか」という視点11/6(土)14:00 大分/しいきアルゲリッチハウス問 アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299 https://www.argerich-mf.jp11/9(火)19:00 東京/東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp©T.Tairadateから選んだ曲目は、実に多彩で知的だ。なかでもヴォルフガング・リームやヒンデミット、そして最後に置かれた、ライマンが2014年にゲーテの戯曲『ステラ』の中の詩句に作曲した〈私を破滅に導いた眼差し〉に目を惹かれる。その間にワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」が入るというチョイスも憎い。まさに「次のステージ」へ上りつつある嘉目の“今”を聴き逃すわけにはいかない。左:中井恒仁 右:武田美和子

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