eぶらあぼ 2021.11月号
57/145

54下野竜也(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団マエストロの十八番、ドイツ近代音楽の名作を集めて文:柴辻純子すみだクラシックへの扉 #0311/19(金)、11/20(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 2022年に楽団創立50周年を迎える新日本フィル。9月開幕の新シーズンからこれまでの「ルビー」シリーズが「すみだクラシックへの扉」にリニューアル。名曲中心でも指揮者の個性が光るプログラムが話題だ。第3回は下野竜也が登場して、彼が得意とする近代ドイツ音楽の名曲を取り上げる。 20世紀を代表するヴィオラ奏者としても知られるヒンデミット「白鳥を焼く男」は、ヴィオラ独奏と小管弦楽のための作品。全3楽章で4つのドイツの古い民謡が素材として用いられ、物騒なタイトルも民謡に由来する。独奏は名手、篠﨑友美(元新日本フィル首席奏者)。冒頭の無伴奏ソロ、第2楽章の子守唄、終楽章の「主題と変奏」の難技巧など聴きどころ満載だ。R.シュトラウス「メタモルフォーゼン」は、23本の弦楽器による作曲家最晩年の作品。美しい旋律がうねり変容する。下野の指揮は、しなやかな流れと絡み合う響きを堪能させてくれるだろう。 この2曲をフンパーディンクの歌劇《ヘンゼルとグレーテル》の「前奏曲」と「夕べの祈り~パントマイム」とで挟み込む。《ヘンゼル~》はグリム童話が原作で子どもも楽しめるが、楽器編成が大きく、日本では経費等、大人の事情(?)もあってか、オペラの上演頻度は高くない。とはいえオーケストラの演奏会でもなかなか…。埋もれがちな名曲にしっかり光を当てるのも下野流だ。 ワーグナーの影響が濃厚なホルン四重奏で始まる「前奏曲」が、音楽の深い森へと導くプログラム。噛みしめるほどに味わい深い。雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第28回 クァルテット・エクセルシオ(弦楽四重奏) クァルテットの魅力ぎっしりの60分文:江藤光紀12/8(水)11:15 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 2015年に第一生命ホールがスタートさせた、音楽ライター・山野雄大による「雄大と行く 昼の音楽さんぽ」は、お昼の時間帯に室内楽を気軽に楽しもうという企画だ。ベテランから若手まで、様々な編成のラインナップで山野のプレトークも含め1時間ちょっとというコンセプトが好評を得ている。 12月に開催される第28回は弦楽四重奏の雄、クァルテット・エクセルシオが登場する。弦楽四重奏には歴史的に名曲が多いのに、日本ではなぜかあまりメジャーではない。すでに四半世紀に及ぶ活動歴の中で、エクはこのジャンルのトップランナーとして東京・京都・札幌での定期演奏会を核に全国各地で、古典から現代まで名演を幅広く聴かせ、ジャンルそのものの普及、啓蒙にも努めてきた。 今回のプログラムもそんなエクのホスピタリティーがあふれている。《フィガロの結婚》序曲、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章(モーツァルト)と誰もが知っている名旋律で始まり、「ピッツィカート・ポルカ」の弾むウィットを、明るく溌剌とした「岸辺のモリー」(グレインジャー)へつなぐ。チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」のしっとりとしたハーモニーで温かくなった後は、ウィーンのメロディーメーカー、ヴォルフの「イタリア風セレナード」。さらに日本のメロディ(幸松肇「弦楽四重奏のための日本民謡より」)を経て、弦楽四重奏の聖典ともいうべきベートーヴェンの「ラズモフスキー第3番」終楽章へとなだれ込む。クァルテットの魅力をぎゅぎゅっと濃縮した60分だ。篠﨑友美下野竜也 ©Naoya Yamaguchi (Studio Diva)

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る