46飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団円熟の手腕が放つシンフォ二スト・シューマンの魅力文:飯尾洋一第347回 定期演奏会 シューマン交響曲全曲演奏シリーズ112/9(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 東京シティ・フィルの桂冠名誉指揮者、飯守泰次郎がシューマンの交響曲全曲演奏シリーズをスタートする。12月9日、まず第1弾として演奏されるのは、交響曲第1番「春」と第2番。続く第3番「ライン」と第4番は来年に予定されている。ブレーメンやマンハイムなど、長くドイツの歌劇場で活躍し、古典派からロマン派のレパートリーを中心に取り組んできた飯守は、日本におけるドイツ音楽の泰斗というべき存在。説得力のあるシューマンを披露してくれることだろう。 シューマンはブラームスと同じく、生涯に4曲の交響曲を残している。演奏頻度はブラームスのほうがずっと高いだろうが、近年、演奏会でもレコーディングでもシューマンの交響曲への注目度が上がってきていると感じる。かつてはよくシューマンの交響曲におけるオーケストレーションの拙さが指摘されたものだが、近年はこれをネガティブにとらえる風潮はほとんど見当たらない。シューマンの厚塗りのオーケストレーションから生まれる彩度の低い渋さを独自の魅力ととらえるか、あるいは演奏現場の実践的な工夫で見通しのよいサウンドを目指すのか。指揮者の作品観の違いがどう音に反映されるのかという点も聴きどころのひとつ。そして第1番「春」にも第2番にも共通するのが、シューマンならではの暗く豊かな情熱だ。長調作品であっても、決してシンプルなハッピーエンドでは済まされないのがシューマン。その玄妙さを巨匠の指揮で味わいたい。飯守泰次郎 ©K.Miura鈴木優人(チェンバロ) J.S.Bachを弾く 1 ―平均律出発点ともいうべきホールで、バッハに浸る新シリーズ始動文:後藤菜穂子11/11(木)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com 鈴木優人の快進撃が止まらない! 指揮者として、バッハ・コレギウム・ジャパンの一員として、オルガニスト、チェンバロ奏者、ピアニスト、作曲家として、さらにはラジオやTVのパーソナリティ、プロデューサー、音楽祭の監督などなど。その多岐にわたる才能と因習にとらわれない発想力、そして父親譲りの勤勉さが相まって、とりわけコロナ禍の日本の音楽界を活気づけてきた。 この秋、その鈴木がトッパンホールと組み、チェンバロ奏者としてバッハの鍵盤作品とじっくり向き合う「J.S. Bachを弾く」というシリーズが立ち上がる。今のところ3年で3公演という企画で、11月11日の第1回は、鍵盤奏者にとっての旧約聖書とも呼ばれる「平均律クラヴィーア曲集第1巻」全曲を取り上げる。これまでにも何度か弾いているが、「この曲集はバッハが37歳のころに作曲されたもので、いまの僕と年齢も近いし、シリーズのスタートに相応しいと思った」と抱負を語る。 鈴木にとって、トッパンホールは自らの原点ともいえるホールで、2007年の初登場以来、さまざまなプロジェクトをともに実現させてきた。クリアでほどよい残響のある音響は、チェンバロの細かいニュアンスを伝えるにはぴったりで、フーガなどを集中して聴くにも適した空間だと考えている。チェンバロで弾く「平均律」の魅力は、ピアノとは違って、「自然と即興的な要素が入ってくること」だと話すとおり、トッパンホールの空間に鈴木のイマジネーション豊かな一期一会のバッハが拡がることだろう。 ©藤本史昭
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