eぶらあぼ 2021.11月号
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124CD川上統:組曲「甲殻」[第一集、第二集、第三集]/亀井庸州&竹本聖子&榑谷静香バッハ:アート・オヴ・ライフ/ダニール・トリフォノフmoment―歌かどう道―/加耒徹&松岡あさひポワンティエ/クインテット・ポワンティエ川上統:組曲「甲殻」第一集、第二集、第三集亀井庸州(ヴァイオリン)竹本聖子(チェロ)榑谷静香(ピアノ)J.C.バッハ:ソナタ第5番/W.F.バッハ:ポロネーズ第8番/C.P.E.バッハ:ロンド ハ短調/J.C.F.バッハ:「ああ、お母さん聞いて」による変奏曲/J.S.バッハ:「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳」から、シャコンヌ(ブラームス編)、フーガの技法、主よ 人の望みの喜びよ(ヘス編)ダニール・トリフォノフ(ピアノ)シューベルト:海の沈黙、漁師のうた/マーラー:歌曲集「さすらう職人の歌」/ヴォーン=ウィリアムズ:リンデン・リー/フィンジ:歌曲集「さあ花束を捧げよう」/山田耕筰:鐘がなります/松岡あさひ:すいぞくかん/コルンゴルト:歌劇《死の都》より/C.M.シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」より 他加耒徹(バリトン)松岡あさひ(ピアノ) 他イベール:3つの小品/リゲティ:6つのバガテル/ライヒャ:木管五重奏曲 ホ短調/ツェムリンスキー:ユモレスク(ロンド)/タファネル:木管五重奏曲 ト短調クインテット・ポワンティエ【世良法之(フルート) 熊澤杏実(オーボエ) 芹澤美帆(クラリネット) 野村和代(ファゴット) 向なつき(ホルン)】コジマ録音ALCD-124 ¥2750(税込)ユニバーサル ミュージックUCCG-45035/6(2枚組) ¥3850(税込)オクタヴィア・レコードOVCL-00759 ¥3520(税込)妙音舎MYCL-00007 ¥3300(税込)ピアノ・トリオというフォーマットで各種甲殻類の動きやイメージを表現しようという川上統の発想にまずはたまげてほしいが、その音楽はちょっと耳にすると聴きやすく、いわゆる「ゲンダイオンガク」とは趣が違うようでいて、しかし単純ではなく実に捻りと工夫に満ちた音楽になっているところを聴き逃すべきではない。多様な奏法の駆使による音色の変化やリズムの工夫、意表を突いた楽曲構成が聴き手を安心させないのだ。このポップさと刺激のバランス加減のなんと絶妙なことよ。3集全15曲、まずは「テッポウエビ」「ウミホタル」、そして「アカガニ」を耳にされたい。実に愉しい!(藤原 聡)ショパン、ルービンシュタイン、チャイコフスキーと数々の国際コンクールで上位入賞を果たし、今や国際的に活躍するピアニストの中でも特に注目される存在の一人となったダニール・トリフォノフ。これまでショパンやリスト、ラフマニノフなどロマン派以降の作品を取り上げてきたが、今回はバッハ、しかも最晩年の傑作「フーガの技法」を中心に、バッハの息子たちの作品も収めたコンセプト性の高い盤である。トリフォノフの透明感ある美しい音色と精密なコントロールが最大限に発揮されており、重なり合う旋律の一つひとつに違った色が感じられ、音の重なりの美しさを実感できる演奏である。(長井進之介)多彩な選曲のリサイタル盤。加耒徹は表現の幅や声のカラーのパレットが豊かな人。たとえば1曲目が陰のあるむき身の表現で歌われて、いつも聴く明るく輝かしい声と違うなと思っていると、2曲目ではそれが全開。そうか。美声で歌うばかりが正道ではない。マーラー「さすらう職人の歌」も声の劇的変化が見事で、彼の歌の世界に引き込まれる。英国歌曲にもウェイトを置いているのはこの人らしさだろう。英語のやわらかな語感。ピアノで好サポートする松岡あさひの〈すいぞくかん〉は可憐かつドラマがあって胸に迫る。最後のレミゼは鮮烈。うっかりバルジャン逮捕を応援したくなる。(宮本 明)クインテット・ポワンティエは愛知室内オーケストラのメンバーが結成した木管五重奏団。いずれも愛知県立芸術大学卒で、軽やかなリズム感で聴き手をひっぱり、伸びやか、しなやかな旋律で魅了する。アンサンブルが自然に呼吸していて、“同じ釜の飯を食べる仲間”的な一体感が爽やかだ。時にファゴットやホルンも大胆に妙技を披露し、各人の実力のほどもうかがえる。イベール、リゲティ、ツェムリンスキーの小品を鮮やかにまとめる一方、ライヒャやタファネルといった古典的な作品では、和声の表現にも妙味があり、吹奏楽的なサウンド、シンフォニックな構成力にも大満足。頼もしい若手たちだ。(江藤光紀)CDSACDCD

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