eぶらあぼ 2021.11月号
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122CDCDCDニーノ・ロータと久石譲 ピアノ作品集/白石光隆ショスタコーヴィチ:交響曲 第8番/井上道義&新日本フィルLux in Tenebris 闇の中の光/若林かをりブラームス ヴァイオリンとピアノのためのソナタ全集/森下幸路&川畑陽子ニーノ・ロータ:「15の前奏曲」より、戯れるイッポーリト、「子どものための7つの小品」より、アマルコルド、8½、甘い生活/久石譲:One Summer’s Day、HANA-BI、Ashitaka and San、Innocent、The Wind Forest、人生のメリーゴーランド、Oriental Wind白石光隆(ピアノ)ショスタコーヴィチ:交響曲第8番、「ステージ・オーケストラのための組曲(ジャズ組曲第2番)」より〈行進曲〉〈リリック・ワルツ〉〈小さなポルカ〉〈ワルツ第2番〉〈ダンス第1番〉井上道義(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団シャリーノ:ベルクソンの時計、さようなら 風の家、死の太鼓、遠景のオーラ、三美神が花開かせるヴィーナス、ヘルメス、雲に捧げられたテキストで、アトンの光輝く地平線、風が運んだ対蹠地からの手紙、どのようにして魔法は生み出されるのか?、歓喜の歌 他若林かをり(フルート/アルトフルート)タイナカジュンペイ(写真)シューマン:「ミルテの花」より〈睡蓮の花〉/ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番「雨の歌」・第2番・第3番、「15の子どものための民謡集」より〈砂の精〉、「5つの歌」より〈子守唄〉/C.シューマン:「6つの歌」より〈僕は暗い夢の中にいた〉森下幸路(ヴァイオリン)川畑陽子(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4097 ¥3300(税込)収録:2021年7月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00761 ¥3520(税込)コジマ録音ALCD-128,129(2枚組+写真集) ¥5960(税込)ナミ・レコードWWCC-7955 ¥2750(税込)ニーノ・ロータと久石譲。この2人の共通項に、映像作品の劇伴音楽のジャンルへ高い芸術性をもたらすとともに、純粋音楽にも優れた手腕を発揮していることが挙げられよう。特に久石は近年、指揮者としての評価も高めている。第一線で活躍する実力派ピアニスト、白石光隆は、この2人の巨匠の作品へ真剣に対峙。ある時は透明に、またある時は豊潤にと変幻自在なタッチを駆使し、その本質へと迫る。ピアノ・ソロというミニマムな形態だからこそ、旋律の美しさやハーモニーの緻密さが浮き彫りに。結果的に、これらの作品が孕んでいた芸術性が、いっそう鮮明な形で提示される。(笹田和人)いま最も痛快なショスタコーヴィチを聴かせる井上道義が、交響曲第8番の名演を生み出した。新日本フィルならではのしなやかで清廉な音色は保ちながら、容赦ない厳しい表現も実現。悠揚迫らぬテンポでひたひたと歩みを進めることで(特に前半2楽章)、堂々たる威容を構築すると同時に、内面の恐怖感まで引き出して余すところがない。全体にトランペットが柔らかめだが、響きが先鋭的にならないための配慮だろう。「組曲」の小粋な明るさや哀愁も絶品で、この楽しさと8番のシリアスさの対比も際立つ。CD収録時間めいっぱいの約82分、“ミチヨシのショスタコ”を堪能する。(林 昌英)若林かをりの奏でるシャリーノからは風の音、星空の輝き、異界からの声、彼方の地平線、透き通った空気など、イメージが豊かに浮かんでくる。技術偏重に陥りがちな現代音楽で、難度を少しも感じさせずにこれだけのポエジーを表現していることが驚きだ。各作品には哲学や文学からインスパイアされたしゃれたタイトルがついているのだから、こういうアプローチは作曲者にとっても望ましいのではないか。同封されたタイナカジュンペイによる写真集も音楽とこだましつつイメージを膨らませ、聴き手の思考は深まり想像が広がっていく。常に身振りを伴う実演とは異なる、CDの特性がうまく生きている。(江藤光紀)大阪交響楽団の首席ソロ・コンサートマスター、森下幸路と、国内外で活躍するレギュラー・パートナーの川畑陽子による同レーベル5枚目のCD。ブラームスのソナタ全曲が主軸ながらも、シューマン夫妻を含む4つの歌の編曲が佳きアクセントになっている。演奏もしっとりとした味わいが横溢。冒頭の「睡蓮の花」の温かさや優しさに即引き込まれ、豊潤なヴァイオリンと好バランスのピアノによる情感豊かなソナタに終始魅了される。各楽章の描き分けも光り、なかでも第3番の起伏が見事。終結後に流れる「子守唄」の余情も実にいい。トータルなアルバムとして素敵な一枚。(柴田克彦)SACD

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