eぶらあぼ 2021.11月号
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120CDCDCDCDアンコール・アンコール/山崎伸子リスト:歌曲集/ヨナス・カウフマンMélangé(メランジェ)/ロー磨秀バッハの源流を求めて―三大「B」ブクステフーデ、ベーム、ブルーンス/椎名雄一郎ブラームス:メロディのように/シューマン:トロイメライ/J.S.バッハ:アダージョ/ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女/ラフマニノフ(ロストロポーヴィチ編):ヴォカリーズ/カザルス:鳥の歌 他山崎伸子(チェロ) 長岡純子 ヴァディム・サハロフ ヴィレム・ブロンズ 加藤洋之 清水和音 野平一郎 小菅優(以上ピアノ)リスト:ぼくの歌には毒がある、よろこびにあふれ 悲しみに満ち、トゥーレの王、ラインの美しい流れの、ローレライ、3人のジプシー、ペトラルカの3つのソネット、たおやかな睡蓮、わたしは死んでゆきたい、天から下りてくるおまえは、すべての山頂に安らぎがある 他ヨナス・カウフマン(テノール)ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)カプースチン:トッカティーナ/ドビュッシー:アラベスク第1番・第2番、アナカプリの丘、西風の見たもの、沈める寺、月の光/バルトーク:ピアノ・ソナタ/メシアン:喜びの精霊の眼差し/ガーシュウィン(ロー磨秀編):サマータイムロー磨秀(ピアノ/ボーカル)ブクステフーデ:トッカータ ニ調、コラール「天にましますわれらの父よ」(シャイト編)、カンツォネッタ ト調/ベーム:プレリュディウム ニ調、キリストは死の縄目につながれたり/ブルーンス:プレリュディウム ト調・ホ調、いざ来ませ 異邦人の救い主よ 他椎名雄一郎(オルガン)収録:2007年12月、津田ホール(ライブ) 他ナミ・レコードWWCC-7954 ¥2750(税込)ソニーミュージックSICC-2235 ¥2860(税込)日本コロムビアCOCQ-85535 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-1195 ¥3080(税込)アンコール・ピースを集めたアルバムとして出色の一枚だ。チェロの名匠、山崎伸子が継続してきたリサイタルの10年にわたる録音から、主に独仏露の名品、ほぼ全曲ゆったりと旋律美を味わえる17曲が選ばれた。山崎の奏でる、木の香りが漂うような深い音色、長い呼吸で歌われるメロディのなんと魅力的なことか。ことにドイツ作品にあらわれる詩情、余情には涙腺が刺激される思いで、いつまでも浸っていたくなる。また、曲順は演奏年次順ではなく、7人の共演ピアニストごとにまとめられていて、個性的な共演者たちとの出会いを大切にする山崎のスタンスがよく伝わってくる。(林 昌英)スター・テノールの最新作はリサイタルでの定番曲に、知られざる名曲を加えて綴った珠玉のリスト・アルバム。ステージでも理想的なパートナーであった伴奏者のドイチュが大の“リスト推し”(彼にとって最大のアイドルだとか)だけあって選曲センスが光り、ヨナスを導き、ライナー解説の執筆も担当しているので、ぜひ対訳付きの国内盤をお薦めしたい。シューベルトやシューマンの歌曲でお馴染みのテキストもあれば、同じゲーテの詩に異なる視点から作曲した2稿の聴き比べや、ワーグナーのあの楽劇から拝借した旋律など、リスト歌曲の魅力を再発見できる一枚。(東端哲也)パリ国立高等音楽院で学んだロー磨秀は、シンガーソングライターとしての顔も持つピアニスト。クラシックとポップス、2つのジャンルを本当の意味で横断する、これまでにない新しい存在感を放つアーティストである。そんな彼の“クラシック・ピアニスト”としての顔が前面に出た本盤はカプースチンにドビュッシー、バルトークにメシアンというバラエティに富んだプログラミングでセンスのよさ、確かな技術、そして音色の多彩さを存分に見せてくれる。どの曲にも溢れる歌心が感じられ、複雑なテクスチュアをもつメシアンの「喜びの精霊の眼差し」でも楽曲の魅力を存分に伝えてくれる。(長井進之介)名手・椎名雄一郎による、大バッハへ影響を与えた北ドイツ・オルガン楽派の巨匠たちを特集するシリーズ。第2弾は、若きバッハが実際に面会したブクステフーデ、親交があったとみられるベーム、そしてブルーンスという“三大B”を取り上げた。今回も、北独ノルデンにある17世紀に建造された銘器シュニットガーを操り、作品への敬意のこもった、繊細かつ大胆な演奏を披露。創意あふれるレジストレーション(音色の選択)が豊かな彩りや立体感をもたらす一方、楽器を鳴らし切る場面でも、決して対位法の構築感は揺るがない。そして、その響きの向こうには、必ずバッハの気配を感じ取らせる。(寺西 肇)

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