eぶらあぼ 2021.11月号
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118SACDCDCDイージー・ウィナーズ~PJBEへのオマージュ/ARK BRASSギターは謳う My Guitar’s Story/鈴木大介ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第7番/伊藤亮太郎&清水和音藤倉大:箏協奏曲/LEOハワース:プロセッショナル・ファンファーレ Ⅰ/ジョプリン(アイヴソン編):イージー・ウィナーズ、ラグタイム・ダンス/ホロヴィッツ:ミュージック・ホール組曲/イングランド民謡(ハワース編):グリーンスリーヴス/沢田完:サイケデリック東京 他ARK BRASS【佐藤友紀(トランペット) 福川伸陽(ホルン) 青木昴(トロンボーン) 次田心平(テューバ) 他】G.ウッド(鈴木大介編):マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ/エリントン(鈴木編):イン・ア・センティメンタル・ムード/U.ノイマン:ラヴ・ワルツ/Á.カブラル(ディアンス編):群衆/M.モノー(ディアンス編):愛の讃歌/武満徹:ギターのための12の歌/B.メイソン&L.リード(武満徹編):ラスト・ワルツ 他鈴木大介(ギター)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」・同第7番伊藤亮太郎(ヴァイオリン)清水和音(ピアノ)藤倉大:箏協奏曲、つき、芯座、竜LEO(箏)鈴木優人(指揮)読売日本交響楽団エイベックス・クラシックスAVCL-84124 ¥3300(税込)アールアンフィニMECO-1064 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCL-00757 ¥3520(税込)収録:2021年4月、サントリーホール(ライブ) 他日本コロムビアCOCQ-85538 ¥3300(税込)佐藤友紀(東響首席トランペット)、福川伸陽(N響首席ホルン)をはじめ、在京楽団の金管トップ奏者が集う新グループのデビュー盤。斯界のレジェンド、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルゆかりの曲を同スタイルで奏でた、懐かしくも楽しい1枚だ。現代日本ブラス界のレベルの高さを示す鮮やかな演奏が続き、「ラグタイム」の愉悦感やメンバーの立ち位置を工夫した「グリーンスリーヴス」の美しさが特に光る。唯一の新作「サイケデリック東京」も違和感なく、しかも新鮮で聴き応え十分。ブラス・ファンの座右のみならず、同ジャンルの入門編としてもお薦めだ。(柴田克彦)人気ギタリストが50歳を迎えた節目に、武満徹編曲「ギターのための12の歌」の3度目(20年振り)となるフル録音に名器で(絶妙なアドリブを入れて)臨んだアルバムだが、それだけでなく、自身の編曲を中心に、武満が敬愛したエリントンの作品を含むスタンダード・ナンバーなど10篇を加えて、これまで半世紀の音楽人生を綴る物語を披露している。どれも素晴らしいが個人的には、Daisuke憧れのギタリストの一人、セルシェルの名演で知られるノイマン作曲「ラヴ・ワルツ」やディアンス編曲シャンソンの名曲2篇が紡ぐエモーショナルな“うた”に心を掴まれた!(東端哲也)N響コンサートマスター・伊藤亮太郎とピアノの重鎮・清水和音のベートーヴェン。伊藤のヴァイオリンはイントネーションが清潔で爽やかだ。ソナタ「春」は瑞々しく美しい。しなやかな旋律と溌溂としたリズム楽句のバランスが快い。その充実の音響には思わず鳥肌が立つほど。ハ短調のソナタ第7番は、冒頭から緊張度が高く、力感漲る。伊藤と清水のせめぎ合いに息を呑む。緩徐楽章の平和な歌には耽溺しそうになるが、コーダの音階上行の嵐で目が覚める。スケルツォ中間のリズムの畳み掛け、フィナーレのトリルとバス連打の衝撃とエネルギー爆発、挿入句の優しさとの対比など、第1級のベートーヴェンだ。(横原千史)藤倉大は、その楽器にできることをゼロベースで洗い出し、演奏者と徹底的にコミュニケートし、すべてを理解した上で「忘れる」。ゆえにできあがる作品は音楽的に無理がなくかつ新鮮なのだが、そのひとつの極みがこの「箏協奏曲」と言いうる。若き箏の演奏家であるLEOから委嘱された本作は、いわゆる純邦楽において耳にするこの楽器の様相とはかなり趣を異にし、「ちらし」や「うち爪」といった箏特有の奏法を駆使しながら、今まで聴いたことのないような音響をこの楽器から引き出す。オケは極めて抑制されたやり方でこの箏と親密な対話を繰り広げ、これはまさに藤倉にしか書けない傑作だろう。(藤原 聡)SACD

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