eぶらあぼ 2021.9月号
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58山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ヤマカズが贈る、異世界で生まれた交響曲二題文:林 昌英第733回 東京定期演奏会 9/10(金)19:00、9/11(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp 日本フィルの2020/21シーズンは、多くの公演が内容変更等の対応を迫られたが、その度に何かしら新しい意味づけをする努力は怠らなかった。その顕著な例は、正指揮者の山田和樹が登場した昨年9月定期。大規模な邦人作品は一旦断念して、代わりに新人作曲家、五十嵐琴未への新作委嘱を行い、ウイルス禍中の新作を生みだしたのである。邦人作品に意欲的な山田と日本フィルの面目躍如であり、芸術的な意義深さも計り知れない。 そして21/22の新シーズン開始の今年9月。昨年断念した大作=水野修孝の交響曲第4番が今度こそ聴ける。水野は1934年生まれ、20世紀中盤の先鋭的な表現から、ジャズ、ミュージカルまで、多様な作風やジャンルを取り入れた、無二の作風をもつ作曲家である。本公演のために作曲者自身がメッセージを寄せており、交響曲という形式は「ひとつのテーマと楽想を中心に、ジャンルを超えて様々な音楽を同居させて、音楽のフルコースとして聴く人を楽しませることができる」と述べている。2003年作の本作は、その言葉通り多彩な要素が次々と現れるユニークな大作だ。実演で体験できる待望の機会に、作曲者も「オーケストラサウンドの多様な変化をお楽しみください。今回の日本フィルと山田和樹さんに期待しています」と語っている。 演奏会前半は、19世紀フランスから、ショーソンの唯一の交響曲を。濃密な情念と情熱が横溢する名品で、フランスでも活躍する山田の指揮で聴けるのは嬉しい。演奏機会の稀少な2つのシンフォニー、じっくりと楽しみたい。山田和樹645コンサート~充電の60分 小南満佑子 オペラ&ミュージカル朝ドラ好演で話題! オペラとミュージカルの名曲で魅せる文:東端哲也9/15(水)18:45 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 「仕事帰りに気軽に楽しめる60分の公演」と好評の第一生命ホール「645コンサート」。9月15日にはこれが同ホール・デビューとなるソプラノの小南満佑子が登場。高校生の時に『レ・ミゼラブル』のオーディションに合格した彼女は、その後、東京音楽大学で声楽を学び、在学中の2017年から同作品にコゼット役で出演を果たした実力派。20年放送のNHK連続テレビ小説『エール』では、二階堂ふみ演じるヒロイン・古山音のライバル、夏目千鶴子を好演し、音楽学校で《椿姫》公演の主役の座を競い合ったのも記憶に新しい。 今回のコンサートではオペラの名アリアとミュージカルの人気ナンバーが混じり合い、両方の分野で活躍する彼女の歌唱を存分に楽しめるプログラムが組まれている。ピアノでサポートするのは飯田俊明。 オペラ側は《ラ・ボエーム》のムゼッタのワルツや《こうもり》の〈私の侯爵様〉などコロラトゥーラのテクニックを必要とする超絶技巧アリアが名を連ねていて胸が高まるが、一方のミュージカル側も色とりどり。『マイ・フェア・レディ』の楽しげな〈踊り明かそう〉や『オペラ座の怪人』の清楚な〈シンク・オブ・ミー〉、ディズニー映画『リトル・マーメイド』の美しいバラード〈パート・オブ・ユア・ワールド〉も楽しみだが、『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンの持ち歌である〈彼を帰して〉を彼女がどう歌うのか、そして涙なくして聴けない『コーラスライン』屈指の名曲〈愛した日々に悔いはない〉にも期待したい!

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