56音楽活動50年のあゆみ 中澤きみ子 My Favorite Concertos2022年5月末 紀尾井ホール問 コンサートオフィスアルテ03-3352-7310 https://www.nipponviolin.com※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 ヴァイオリニストの中澤きみ子が音楽活動50周年を記念する演奏会をひらく。長引くコロナ禍の影響で公演の開催が来年5月に決定した。 長野県上田市生まれ。スズキ・メソードでヴァイオリンを始めた。新潟大学卒業後、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院に留学。1991年に「アンサンブル・ウィーン東京」を結成した。フィリップ・アントルモン&ウィーン室内管弦楽団とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集を録音。東日本大震災後、夫である弦楽器製作者の中澤宗幸氏が震災の流木から製作したTSUNAMIヴァイオリンの演奏にも熱心に取り組むなど多彩な活動はよく知られているところだ。活動50年、そしてウィーン 長い活動の背景にはご主人の大きな支えが。 「50周年…いつの間にか、というのが正直な気持ちです。本格的に演奏家として活動できるようになったのは子育てが終わった40代からでした。次のコンサートのために練習し、また次のコンサートのために練習してと追いかけているうちに今になりました。主人の理解や応援がなければできないことで、彼がずっと私の一番のファンでいてくれることに心から感謝しています」 この間に多くの印象的な出来事があった。 「大学卒業後、長野で10年間、50人の子どもたちにヴァイオリンを教えていたのですが、一度ヨーロッパの音楽に触れたいとザルツブルクのモーツァルテウムに留学して、その時コンクールで優勝したんです。聴衆からあまりに大きな反響をいただき、初めて自分に自信が持てました。また、50歳の時に文化庁芸術家海外派遣員としてウィーンで学んだのですが、若い頃には感じられなかったものを目や耳で感じ、以来、同地で活躍した作曲家の作品を中心に演奏するようになったのです」 この演奏会でもウィーンで活躍したモーツァルトとベートーヴェンの協奏曲をメインとすることに決めた。 「ベートーヴェンの協奏曲は18歳の時、初めて深く学んだ思い出の曲で、何度もオーケストラと弾く機会がありました。モーツァルトの第3番は一番好きな協奏曲ですし、アダージョK.261もしみじみと味わい深いです。どの曲をとっても、今の年齢ならではの深い情感が感じられるようになりましたので、それをぜひ聴いていただきたいと思います」愛弟子や長年の友人たちとの共演が実現 指揮は東京藝術大学で学長を務めるヴァイオリニストの澤和樹。オーケストラは、中澤の教え子たちにより特別に結成された「中澤きみ子SPECIALオーケストラ」だ。このメンバーには辻彩奈も含まれる。 「澤先生とは、彼がロンドンに留学していらした頃からの長いお付き合いです。コンサートマスターは、ウィーン室内管弦楽団のヴァイオリニストのルードヴィッヒ・ミュラーが務めてくれます。彼も古い友人で私にウィーンのすべてを教えてくれたと言ってもいい最高の友人です。彼と91年にアンサンブル・ウィーン東京を結成し、今でも活動しています。チェロの首席は、やはり同じクァルテットのマイケル・ウィリアムズに呼びかけたところ参加してくれることになりました。コンサートを2022年に延期することにしたのもこの2人の来日が難しくなったからなのです」 コンサートは来年に持ち越しとなったが、中澤は意欲的な活動をみせる。 「秋にはロシアのコーガン音楽祭に招聘されていて、TSUNAMIヴァイオリンを用いて、チェコ・フィルとの録音計画もあります。コロナの感染状況次第ですけれど実現できることを願っています」©Akira Muto中澤きみ子(ヴァイオリン)音楽活動50年の輝かしき集大成ここに披露取材・文:山田治生Interview
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