50デイヴィッド・レイランド(指揮) 東京都交響楽団欧州で活躍中の指揮者が日本の俊英と共演文:飯尾洋一第934回 定期演奏会Bシリーズ 9/9(木)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 9月9日に開催される都響の定期演奏会Bシリーズは、当初の予定を変更して指揮のデイヴィッド・レイランドとピアノの北村朋幹を招く。都響初登場のレイランドはベルギー出身の実力者。ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の副指揮者を経て、現在はフランス国立メス管弦楽団(旧フランス国立ロレーヌ管弦楽団)およびローザンヌ・シンフォニエッタで音楽監督を務める。また、2020年にはデュッセルドルフ交響楽団の「シューマン・ゲスト」に任命されている。これはシューマンゆかりの同地のオーケストラならではの客演指揮者の役割で、シューマンとオーケストラとの結びつきに焦点を当てるものだという。 そんなレイランドが披露するのは、シューマンの歌劇《ゲノフェーファ》序曲、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番ハ短調(独奏は北村朋幹)、そしてシューマンの交響曲第2番ハ長調というハ短調/ハ長調プログラム。ピアノ協奏曲第24番はモーツァルトの貴重な短調作品として異彩を放っているが、はたして北村はどんなモーツァルトを奏でてくれるのか。北村は古典から現代作品まで非常に音楽的視野の広いピアニスト。カデンツァには作曲者自身の作が残されていないが、だれのものを使うのかも楽しみだ(自作の可能性も!?)。シューマンの交響曲第2番は作曲者独自の濃密なロマンと古典への憧憬から生まれた大傑作。デュッセルドルフでも同曲を指揮したレイランドが、シューマンの真髄を聴かせてくれることを期待したい。Hakujuの歌曲 #1 ブラームスの愛と死 ~小山由美 メゾ・ソプラノ名作歌曲を通してブラームスの真髄に迫る文:江藤光紀10/2(土)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp 小山由美は日本が世界に誇るメゾソプラノ。 バイロイト音楽祭をはじめ、欧州で輝かしいキャリアを歩みつつ、国内でも幅広い役柄を演じてオペラ界の発展に貢献してきた。 室内楽には理想的な規模(300席)と音響に恵まれたHakuju Hallでも、彼女はカルメンに代表されるオペラの悪女を演じ(2016)、またプーランクから新ウィーン楽派まで20世紀前半の歌曲を歌って(2018)、いずれも好評を博してきた。3回目となる今回は、いよいよブラームスにスポットを当て、レパートリーの本丸ともいうべきドイツ・リートの精髄に迫る。 ドイツ・ロマン派は優れた詩人と作曲家を輩出したが、リートはその究極のハイブリッド。ブラームスも生涯にわたって数多くの曲を残した。小山はドイツの大学で教鞭を取り、また楽譜編纂にも実績を持つが、今回の選曲にもアカデミシャンらしさが表れている。 ブラームスがインスピレーションの源泉の一つとしてきた民謡集で始め、中・後期の創作から選りすぐりの名旋律(後にヴァイオリン・ソナタへと転用された「雨の歌」も!)を聴かせる。ドイツ語の音韻の美感を生かしつつ、曲の個性を多彩に歌い分けていくベテランの味が楽しめそうだ。締めくくるのは、ブラームス最後の大作ともいうべき「4つの厳粛な歌」で、こちらは重々しく、構成力も必要とされる。作曲家の生涯像まで浮かんできそうである。 ピアノは過去2回の公演でも共演した佐藤正浩。近年はオペラ指揮者としてますます脚光を浴びており、声の生理を知り尽くした理想的な伴奏者である。©堀田力丸北村朋幹 ©TAKA MAYUMIデイヴィッド・レイランド ©Jean-Baptiste Millot
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