47高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団聴いたらハマる! ネオ・クラシシズムの傑作群を一挙紹介文:林 昌英第345回 定期演奏会 10/14(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp ストラヴィンスキーは「三大バレエ」だけではない――20世紀音楽界に与えた影響の大きさと知名度に比して、創作の全体像は意外と知られていない作曲家だが、10月の高関健指揮の東京シティ・フィル定期「ストラヴィンスキー没後50周年記念プログラム」は、その全容を窺うきっかけになり得る。 大管弦楽を完璧に操った1910年代前半の「三大バレエ」の後、第一次大戦とスペイン風邪流行の時期を挟み、20年頃から「新古典主義」と呼ばれる作風に変わった。古典的な管弦楽法で響きはシンプルながら、不可解なメロディーライン、落ち着かない不規則なリズム、なにより音楽がドライそのもの。できるだけ感動を排除しようとするかのような作風で、最初は聴く人を面食らわせるが、その語法に馴染み始めると妙にクセになる。 今回選ばれたのはこの作風の4曲。真面目か冗談かわからないような小曲「小管弦楽のための組曲第2番」、端正でアルカイックな美をもつ弦楽合奏用の「ミューズを率いるアポロ」、カードゲームの様子が有名曲の断片を交えてユーモラスに展開する「カルタ遊び」、堂々とした力強さと奇妙な語法が同居する大作「3楽章の交響曲」。いずれもクールな音の運動や様々な楽器による瞬間芸が、独特の楽しさや未知のサウンドを生み出す。そのためには知的なアプローチと楽団の集中力ある名技が不可欠だが、深い関係を構築してきた高関&東京シティ・フィルならば、そこに“温かみ”までもが加わる、理想的なストラヴィンスキー解釈が披露されるはずだ。高関 健 ©上野隆文第141回 アンサンブル of トウキョウ 定期演奏会個々の手腕も際立つ、ニ長調の“歓喜”文:柴田克彦10/28(木)19:00 紀尾井ホール問 アンサンブル of トウキョウ事務局03-3426-2010 https://www.ensembleoftokyo.com ニ長調は明るく華やかに響く。そんな「内から勇気がみなぎる」(公演コピー)ニ長調作品だけを集めたのが、10月の「アンサンブル of トウキョウ」定期だ。同グループは、様々な形態の室内楽と小編成の管弦楽作品をレパートリーとし、メンバーは内外のコンクール入賞者や東京藝術大学教授、在京楽団の奏者等の19名で構成。現在はN響首席オーボエ奏者の青山聖樹が代表を務めている。1986年の創立以来年4回行う定期演奏会は140回を超え、海外公演も複数行うなど実績も十分だ。 今年3回の定期は室内楽だったが今回はオーケストラ編成。指揮者なしで室内楽を拡大した精緻な楽興を奏でる。幕開けはシューベルトの初期のオペラ《ヒュドラウリスになった悪魔》D4序曲。溌剌たる佳品で、かようなレア曲を聴けるのがまず嬉しい。次いで玉井菜採がソロを弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。玉井の確かな技量は、コンサートマスターを務める紀尾井ホール室内管弦楽団でも証明されており、本人も「作品のもつ自然な至高の美しさに近づくことを目指したい。カデンツァもこれまでのクライスラーとは違うものを」と語っているので大いに楽しみだ。そして愉悦感溢れる傑作、モーツァルトの「ポストホルン」セレナーデ。芳醇な合奏は元より、木管が活躍する同曲は、青山やフリーで精力的な活動を展開している村上成美(フルート)、カメラータ・ザルツブルク首席奏者のフランク・フォルスト(ファゴット)、日本フィル・ソロトランペット奏者オッタビアーノ・クリストーフォリ(ポストホルン)ら、「各ソロにも注目してほしい」(青山)ところ。ここは明朗な名曲で元気と歓喜を取り戻そう!玉井菜採 ©尾形正茂青山聖樹
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