43ハーゲン プロジェクト2021世界的クァルテットの“いま”を体感するプログラム文:飯尾洋一第1夜 10/18(月) 第2夜 10/20(水) 第3夜 10/21(木)各日19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com ハーゲン・クァルテットがこの秋、トッパンホールにやってくる。同ホールとは長い結びつきを持つハーゲン・クァルテットだが、近年はベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会やモーツァルト・ツィクルス、シューベルト&ショスタコーヴィチ・ツィクルス、ハイドン&バルトーク・ツィクルスといったプログラムで、クァルテットの進化する姿を伝えてきた。弦楽四重奏曲の最重要レパートリーを一回りした感もあるが、そこで注目されるのが今回のプログラム。3夜にわたるシリーズを、特定作曲家のツィクルスとはせずに、モーツァルト、ウェーベルン、シューマンで1夜、ベートーヴェンで2夜という構成で組んできた。 第1夜(10/18)はモーツァルトの弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」、ウェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章、シューマンの弦楽四重奏曲第1番という多彩な組合せ。当初はまだ同ホールで取り上げていなかったドヴォルザークを核に考えていたところ、話が進むにつれて周辺作品だけが残ってドヴォルザークがなくなってしまったという。裏を返せば彼らが今いちばん弾きたいと思っている曲が集められたのがこの日のプログラムともいえる。 第2夜(10/20)と第3夜(10/21)はオール・ベートーヴェン。20日が弦楽四重奏曲第1番、第16番、第8番「ラズモフスキー第2番」、21日が第2番、第11番「セリオーソ」、第14番。いずれも初期・中期・後期から一曲ずつが選ばれている。意外な選択、それとも納得の選択だろうか。ハーゲン流ベートーヴェンのエッセンスを堪能したい。©Harald Homannチョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団「内側で燃えている」必聴のブラームス交響曲文:柴田克彦第141回 東京オペラシティ定期シリーズ9/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第958回 サントリー定期シリーズ9/17(金)19:00 サントリーホール第959回 オーチャード定期演奏会9/19(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp チョン・ミョンフンの音楽はますます内奥へ向かっている─東京フィルと12年ぶりに挑む「ブラームス交響曲の全て」の7月公演の1曲目、交響曲第1番の出だしを聴いて即座にそう思った。堂々たる進軍ならぬ地を這うように沈んだ動きは、これまでこの曲で耳にしたことがない世界だ。その後も陰りを強調した重厚ながらもくすんだ音楽が続く。しかし第2番では一転陽光の世界へと移行。こちらは明朗かつ引き締まった音楽が展開される。最後の迫真的な畳み込みの後は場内も興奮の坩堝。《カルメン》の名演以来1年4ヵ月ぶりの共演に東京フィルの集中力もMAXで、当コンビの別格感と絆の深まりを強く印象付けた。 2曲ともに内側で燃えていることは間違いない。だが曲の性格に沿って放射される方向が変わる。この1番&2番の見事な対比を聴くと、9月の3番&4番への期待のボルテージは高まるばかりだ。雄渾な活力と寂寥が並立し、全楽章が弱音で終わる、どこか不思議な交響曲第3番、古い形式を活用した密度の濃い技法で濃厚なロマンが表出される傑作交響曲第4番……1番&2番以上に複雑な両曲を、円熟味を増した今のチョン・ミョンフンが、付き合いも20年に達する東京フィルとともに、どのようなアプローチでいかに表現し、いかなる感銘を与えてくれるのか? これはこの上なく興味深い。 チョン・ミョンフンは、「私にとってブラームスの音楽は、突き破って飛び立つのを待っているような燃える情熱です」、そして「第4番では心が飛翔する」と語る。9月の東京フィル定期に足を運び、その情熱と飛翔をぜひ体験したい。7月定期演奏会より ©K.Miura
元のページ ../index.html#46