eぶらあぼ 2021.9月号
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112CDCDCDバッハ By バスーン・アローン/フィリップ・トゥッツァー海ゆかば 信時潔歌曲集/小川明子&山田啓明チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」・第6番「悲愴」/小林研一郎&日本フィルDuo Energy/ピアノデュオ ドゥオールJ.S.バッハ:無伴奏チェロのための組曲第1番・第4番、「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調」より〈ジーグ〉(ハ短調編曲版)、「無伴奏チェロのための組曲第6番 ニ長調」より〈クーラント〉/C.P.Eバッハ:無伴奏フルートのためのソナタ(レヒトマンによるニ短調編曲版) 他フィリップ・トゥッツァー(ファゴット)信時潔:わすれな草、北原白秋の詩による歌曲、茉莉花、「小倉百人一首より」、花すみれ、短歌連曲、「小曲五章」、不盡山を望みて、「沙羅」、海ゆかば、「中國名詩五首」、帰去来、歸去來の辭、日本のあさあけ小川明子(アルト)山田啓明(ピアノ)チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」、同第6番「悲愴」小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団ボロディン(A.ポープ編):だったん人の踊り/バーンスタイン(J.マスト編):シンフォニック・ダンス/ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」全曲(ドゥオールアレンジによる連弾版)(L.ガーバン/J.シャルロ編)、亡き王女のためのパヴァーヌ(R.シム編)ピアノデュオ ドゥオール【藤井隆史 白水芳枝(以上ピアノ)】コジマ録音ALCD-9219 ¥3080(税込)ナミ・レコードWWCC7950-1(2枚組) ¥5500(税込)収録:2021年6月、東京芸術劇場(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00760(2枚組) ¥3500(税込)Studio N.A.TNAT-21111 ¥2970(税込)ザルツブルク・モーツァルテウム管首席奏者の初のソロ・アルバム。大バッハ(1曲のみ息子エマヌエル)のチェロとフルートを中心とする無伴奏曲をファゴットで演奏した、極めて意欲的な内容だ。どの曲も豊潤な音色と高度な技巧を駆使して鮮やかに表出されており、中でもクーラントやジーグ等の快速楽曲における滑らかなフレージングときめ細かなアーティキュレーションに感嘆させられる。重音の処理も巧みだし、遅い曲の歌いまわしも魅力十分。バッハの揺るがぬ音楽性を再認識させると同時にこの楽器の個性も堪能させる、バッハ・ファン&管楽器ファン注目の1枚。(柴田克彦)カンタータ「海道東征」や歌曲集「沙羅」をはじめとする芸術音楽のみならず、手がけた校歌の数も膨大な信時潔(1887-1965)。その音楽に魅せられた名コレペティトアの山田啓明が、母校の校歌もやはり信時の作と言う小川明子と取り組んだこのアルバムには、彼らの尽きせぬ思い入れが滲む。ドイツ・ロマン派を思わせる和声と、百人一首や漢詩が湛えた日本語の美しさ。二人は丹念に、余さず掬い取ってゆく。最も有名な「海ゆかば」から確かに聴き取れる、コラールの響き。それが「中國名詩五首」の終曲「海に泛ぶ」へと巧みに関連づけられるあたり、作曲年代順の収録ならではの気づきも。(笹田和人)2020年のチャイコフスキー生誕180年を記念しての交響曲全曲ツィクルス第3回目のライブだが、齢80を迎えてコバケンの演奏はさらなる深化を遂げている。直接的な迫力や盛り上げに代わり、作品に内在する情念がむしろ内側へ沈滞していく趣。「悲愴」では遅めのテンポによる丹念な表情付けが、外側からの取ってつけたような悲劇性を排して作曲者の真実の心情を表すかのようだ。「ポーランド」でも入念さは変わらず、ともすると長く感じられるこの曲がかくも気高い様相を呈することも稀では。日本フィルは終始つややかかつ安定した音を響かせ決して粗くならない。名演。(藤原 聡)共にドイツで研鑽を積み、日本におけるピアノ・デュオによるユニットの中でも突出した存在感を放つ「ピアノデュオ ドゥオール」。自然と呼吸のあったアンサンブルは、予定調和ではなく、作品自体が求める自然な流れを生み出していく。今回のアルバムには様々なタイプの舞曲を収録。リズムの要素が強い舞曲は両者の呼吸を合わせる難易度がさらに上がるのだが、そこはさすがの二人。作品ごとに違った色を見せながら、鍵盤上で鮮やかに指が舞う。特筆すべきは「亡き王女のためのパヴァーヌ」。これだけの静謐な世界を2台ピアノアンサンブルで作り出せるのには驚かされた。(長井進之介)CD

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