110CDCDショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」・第3番「メーデー」/井上道義&大阪フィル《ワルトシュタイン》《悲愴》《熱情》―ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集―/外山啓介間宮芳生:チェロとピアノのための作品集/髙橋麻理子&山田剛史高橋アキ プレイズ ケージ×フェルドマン viaサティショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」、同第3番「メーデー」井上道義(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団大阪フィルハーモニー合唱団ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」、同第8番「悲愴」、同第23番「熱情」外山啓介(ピアノ)間宮芳生:五つのフィンランド民謡 チェロとピアノのための、チェロ・ソナタ、六つの日本民謡 チェロとピアノのための髙橋麻理子(チェロ)山田剛史(ピアノ)ジョン・ケージ:スウィンギング、チープ・イミテーション、果てしないタンゴ、チープ・イミテーション(トリオ版)(モートン・フェルドマン編)/伝ジョン・ケージ:エリック・サティのための小石の全面 そして高橋アキ(ピアノ)マーガレット・ランカスター(フルート/ピッコロ) デイヴィッド・シヴリー(グロッケンシュピール)収録:2018年3月、フェスティバルホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00689 ¥3520(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84122 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-130 ¥3080(税込)カメラータ・トウキョウCMCD-99087 ¥2420(税込)井上道義の大阪フィル首席指揮者退任後の定期演奏会ライブ。当日はこの2曲にバーバーの協奏曲という難曲揃いの挑戦的プログラムで、会場で聴いてその出来の良さに舌を巻いたものだった。その完成度の高さはこのディスクでもよく解る。2曲はいずれも20代初めの若きショスタコーヴィチが、持てる力を詰め込んで誇示するかのような超難曲のシンフォニー・カンタータ。第2番では中間の27声部にも達する複雑なフガートを大阪フィルが見事にこなしている。第3番では不思議に抒情的な中間部の前後で、錯綜したトゥッティがおどろおどろしく疾走する。大阪フィル合唱団の凛々しい歌声も出色の出来だ。(横原千史)外山啓介が、2007年のCDデビュー以来8枚目となるアルバムで、ついにベートーヴェンのピアノ・ソナタ集に挑んだ。第21番「ワルトシュタイン」は、冒頭から潔い音を鳴らしてスタートを切り、端正に音を重ねて、骨太な音楽を構築していく。第8番「悲愴」は、クリアな音を重ねた和音にパワーがあり、またときおり顔を覗かせる大胆な抑揚でハッとさせる。第23番「熱情」では感情をあらわにしながらも、冷静さは手放さない。いずれのピアノ・ソナタでも、クリーンで思い切りの良い音が堂々と響き、今の彼自身の表現への確信が感じられて気持ちが良い。 (高坂はる香)間宮芳生は調性音楽でも素晴らしいセンスとインスピレーションを見せる。それが民謡や旋法と出会った時に、清々しく、メランコリックな世界が開けてくる。歌い継がれてきた旋律をファンタジックな夢想と結びつけた「六つの日本民謡」のほかに、間宮がつながりの深かったフィンランドのそれを素材にした作品が収録され、長い創作歴のエッセンスを示してくれる。「チェロ・ソナタ」では蒸留されたようにピュアな空間でピアノが煌めき、チェロが息の長いカンティレーナを歌う。髙橋麻理子のチェロは張りのある音色で歌心にあふれるだけでなく、ソナタでは目の覚めるようなフラジオレットを聴かせている。(江藤光紀)サティ演奏のスペシャリストである高橋アキ。近年は新たなサティの演奏・録音に取り組んでいるが、本盤は、サティの存在を根幹としつつ、高橋にとってまた重要な作曲家たちの作品が収められている。核となるのは2つの「チープ・イミテーション」。サティの作品を基に書かれたジョン・ケージのピアノ独奏作品と、それをモートン・フェルドマンがフルートとピアノ、グロッケンシュピールのトリオに編曲したものだ。繊細な旋律、変化し続けながらも楽曲を貫く一本の線。色彩感と構成感が要求されるが、高橋の硬質かつデリケートなタッチによって見事に作品の構造と色彩が描き出されている。(長井進之介)SACDCD
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