eぶらあぼ 2021.9月号
109/133

106CDCDCDバロック・クロニクルズⅡ ~異邦人~/福田進一時のはざま―左手のためのピアノ珠玉集/舘野泉MANHATTAN DREAM on Broadway/柴田智子シェエラザード/名古屋ダブルリードアンサンブルヘンデル:サラバンドと変奏/ヴァイス:パッサカリア、プレリュードとファンタジー、組曲「異邦人」、トンボー~ロジー伯爵の墓に捧ぐ/ロイスナー:パドゥアーナ/ザンボーニ:ソナタ第6番/チマローザ:3つのソナタ 他福田進一(ギター)樹原涼子:季節の三部作/木島由美子:桃花水/パルムグレン:Intermezzo/村田昌己:時のはざま/八木幸三:泡盛オン・ザ・ロック/光永浩一郎:かもめの水兵さんによるオマージュ、海の沈黙/月足さおり:風の彩、雫~しずく~/エスカンデ:松尾芭蕉による3つの俳句/梶谷修:風に…波に…鳥に…舘野泉(ピアノ)メンケン:Beauty and the Beast/ブリッツスタイン:I wish it so/バーンスタイン:Piccola Serenata、A Julia de Burgos、So Pretty、Dream with Me、Tonight、Somewhere/シュワルツ:With You/ロイド=ウェッバー:Think of Me 他柴田智子(ソプラノ) ロブ・フィッシャー(指揮/ピアノ)&オーケストラリムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」、歌劇《皇帝サルタンの物語》より〈くまんばちの飛行〉/ボロディン:歌劇《イーゴリ公》より〈だったん人(ポロヴェツ人)の踊り〉(以上山本直人編)名古屋ダブルリードアンサンブルマイスター・ミュージックMM-4094 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00186 ¥3520(税込)ユニバーサルミュージックDCT-3329 ¥2500(税込)妙音舎MYCL-00018 ¥3300(税込)福田進一のレパートリーの拡がり及び高水準の演奏には毎回感嘆させられる。伊〜仏〜独と伝播するバロックの流れをフォローするコンセプト・アルバム『バロック・クロニクルズ』に続いての本作では、バロック・リュートの大家たるヴァイスの組曲「異邦人」を中心に据え、その前後に活躍したドイツ以外の作曲家=「異邦人」(まさに!)たちの生み出した音楽史を辿る。前作よりは玄人好みの作品が並んでいる感はあるが、その演奏はさらに素晴らしく、それはメイン曲たる「異邦人」での各舞曲における水際立った表現力を耳にすれば理解できよう。福田自身の意欲的な編曲も含め注目点は余りに多い。(藤原 聡)2002年以来、「左手のピアニスト」として地道かつ世界規模での活動を続けてきた舘野泉。国内外から彼に捧げられた左手のための作品は100曲に及ぶ。2020年夏にエストニアで収録された本アルバムには、樹原涼子、村田昌己、光永浩一郎ほか7名の邦人作曲家が舘野に捧げた作品をまとめた。京都在住のエスカンデの「松尾芭蕉による3つの俳句」や、パルムグレンが唯一残した左手の作品も収録。花、風、水といった自然をテーマとした作品群が並び、時に濃淡豊かな墨絵のように、時に淡く広がる水彩画のように、限られた音数で織りなす洗練された情感で満たされてゆく。(飯田有抄)“今を生きる喜び”を歌うソプラノが1995年にニューヨークの名門スタジオでオーケストラと録音したデビュー盤の嬉しい再発。近年は自作曲など日本語の歌にも定評がある彼女だが、ここでは20世紀米国音楽を瑞々しい歌唱で紡ぐ。クラシックの優れた歌い手にしてM.ブリッツスタインやS.シュワルツ、V.ハーバートらが書いたブロードウェイの宝石たちを輝かせるスタイルは圧巻。愛するバーンスタイン作品はとりわけ素晴らしく、超絶技巧の人気曲やよく知られた名曲も見事だが〈So Pretty〉(※I feel prettyとは別もの)や〈A Julia de Burgos〉〈Dream with Me〉ら知られざる佳曲が最高!(東端哲也)名古屋フィルの首席オーボエ奏者を長年務めた山本直人が主宰する、オーボエ属とバスーン属のみ9人編成のアンサンブルの4枚目のアルバム。中部地方の名手たちが集って2002年から恒常的に活動しているがゆえのまとまりの良さと音色の統一感が光るし、こうした楽器特有の歯切れ良さも耳を楽しませる。オーボエ・ダ・モーレを含む多様な個性を巧みに組み合わせた楽器用法も秀逸。特に「シェエラザード」は新感覚の木管作品として再創造されており、それでいて音楽の流れはごく自然である点が素晴らしい。ダブルリード楽器の魅力の再発見を促す興味深い1枚。 (柴田克彦)SACD

元のページ  ../index.html#109

このブックを見る