eぶらあぼ 2021.8月号
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51三ツ橋敬子(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団ヴェルディの魅力をとことん味わい尽くす真夏のステージ文:山田治生第636回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉7/30(金)19:15、7/31(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 新日本フィルの2020/21シーズン最後の定期演奏会では、日本を代表する今が旬の4人の歌手たちとともに、ヴェルディの作品を楽しむ。小林厚子は、今年に入って、新国立劇場の《ワルキューレ》のジークリンデ、《ドン・カルロ》のエリザベッタと、立て続けに重要な役を務め、ますます注目度が高まっている。メゾソプラノの清水華澄はオペラ、コンサートのどちらでも活躍する、旬の歌い手。テノールの宮里直樹は、ロドルフォ、カヴァラドッシ、アルフレードなど、プッチーニやヴェルディの人気オペラで次々と大役を歌う期待の星。バスの須藤慎吾は、藤原歌劇団を代表する歌手として人気を博すほか、新国立劇場でも活躍。この4人の歌う《ドン・カルロ》《アイーダ》《ルイザ・ミラー》《イル・トロヴァトーレ》《運命の力》《リゴレット》などの名作のアリアは、まさに聴きものである。「レクイエム」から奉献唱(四重唱)も楽しみ。 指揮の三ツ橋敬子は、近年、イタリア(ヴェネツィア)を拠点に活躍し、イタリア・オペラのレパートリーを広げつつある。《シチリア島の夕べの祈り》のバレエ音楽「四季」から〈夏〉や〈アイーダ・シンフォニア〉といった、演奏機会の少ないオーケストラ作品の紹介は、彼女ならではといえるだろう。《運命の力》序曲では三ツ橋の真価がわかるに違いない。レア曲から超名曲まで、ヴェルディの音楽を今まさに聴くべき音楽家たちと楽しみたい。印田千裕 ヴァイオリンリサイタル名手の妙技に触れる、モーツァルトと20世紀作品プログラム文:笹田和人8/27(金)19:00 東京文化会館(小)問 マリーコンツェルト03-5944-2436 http://chihiroinda.com 美しく、しなやかに、そして時には情熱的に。“今”を謳い上げる、鮮烈な調べを体感したい。古典作品はもちろん、邦人作曲家による新作初演や、現代作品の紹介にも積極的に取り組むなど、骨太かつ柔軟な活動が光る実力派ヴァイオリニストの印田千裕。モーツァルトにメシアン、バルトーク、さらに現代日本の女性作曲家の先駆者による佳品と、彼女らしいユニークなプログラムによるリサイタルに臨む。 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、および同大学卒業。その後は英国王立音楽院ディプロマコースに学び、国内外のコンクールで入賞するなど実績を重ねた。現在はオーケストラとの共演やリサイタル開催など、ソリストとして精力的に活動する一方、室内楽の分野でも活躍。チェリストの弟・陽介とのデュオ活動では、定期的にリサイタルを開き、知られざる作品の発掘にも力を注いでいる。 リサイタルは、メシアンのスペシャリストである、ピアノの名手・安田正昭が共演。印田が「ずっと弾きたかった」という、メシアンの最初期の作品「主題と変奏」やバルトークのソナタ第1番を軸として、モーツァルトのソナタ第26番K.378を組み合わせる。また、特集アルバムを発表するなど、特に日本の女性作曲家によるヴァイオリン作品の紹介に力を注ぐ印田。今回は、日本の伝統音楽に根ざした作風で知られる増本伎共子(1937~)の作品から、「ソロヴァイオリンのための4つの小曲」(1960)も披露する。三ツ橋敬子 ©Earl Ross須藤慎吾小林厚子 ©Yoshinobu Fukaya清水華澄 ©Takehiko Matsumoto宮里直樹 ©Yoshinobu Fukaya©小島竜生

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