eぶらあぼ 2021.8月号
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45雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第21回 牛田智大 ピアノ・リサイタルショパンの感情、人生観を表現するプログラム文:高坂はる香9/9(木)11:15 第一生命ホール 7/20(火)発売問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 平日のお昼、音楽ライターの山野雄大のナビゲートでさまざまな演奏家の音楽を楽しむことができる、第一生命ホールのコンサートシリーズ「雄大と行く 昼の音楽さんぽ」。9月の公演には、新型コロナの影響による1年の延期を経て、ピアニストの牛田智大が出演。オール・ショパン・プログラムを披露する。 12歳の少年だったデビュー時のイメージが未だ強い方もいるかもしれないが、今や彼も21歳。歌う表現にはより一層多彩な感情が加わり、堂々とした音楽にも磨きがかかっている。 今回の公演プログラムは、異なるスタイルの作品をあわせてひとつの音楽を作るようなイメージでセレクトしたという牛田。その内容は、3つのマズルカop.56ではじめ、すでに録音もしている大曲「24の前奏曲」、そしてショパン晩年の傑作である「舟歌」でしめるというもの。 いずれも牛田がショパンの感情を強く感じ、その人生観を表現できるのではないかと考えている作品だという。なかでも「舟歌」を最後に置いたのは、その特別な“無常観”に、これに続けて弾いて“対抗できる作品は少ない”からだそう。 以前牛田は、ショパンは子どもの頃から取り組んできた作曲家だが、知るほどに、その難しさをますます実感していると話していた。 今回のプログラムは、今、集中的にショパンの作品に取り組み、より深く入り込んでいるからこそ組み立てることのできた内容。休憩なし60分公演とコンパクトながら、聴きごたえ十分となりそうだ。©Ariga Terasawaセバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団ドイツの名匠と若き俊才が名曲プロで共演文:林 昌英第239回 土曜マチネーシリーズ 8/28(土)第239回 日曜マチネーシリーズ 8/29(日)各日14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp 外国人指揮者がポストに就いているオーケストラは、この1年半、共演機会を作ることに苦心してきた。しかし、セバスティアン・ヴァイグレが常任指揮者を務める読売日本交響楽団には、独特の落ち着きがある。なにしろ、昨年12月からこの7月までのうち、彼が滞在して共演を重ねた期間は4ヵ月を超える。ヴァイグレがいることは、もはや「日常」に近い光景になっているのだ。もちろん、親密にはなれども馴れ合いは一切なし。2月の東京二期会《タンホイザー》の名演をはじめ、じっくりと高水準な共演を重ねたことで、読響はドイツの楽団もかくやという深く豊かな響きを獲得。6月の公演も充実の名演ぞろい、ことに細部まで彫琢されたフランツ・シュミットは印象的だった。 そして8月下旬には、3度目の隔離期間を経て(予定)、またヴァイグレが登場してくれる。土日のマチネーシリーズは、モーツァルト《フィガロの結婚》序曲、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」という名曲プロが用意された。何と言っても「運命」は注目で、いま理想的な関係を築いている彼らでしか構築できない、特別な演奏になる予感。協奏曲は、10代で第85回日本音楽コンクール第1位、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール第2位(1位なし最高位)に入賞、ソロに室内楽にと大活躍中の戸澤采紀が登場。若き俊才の戸澤とドイツの名匠の共演で、スラヴの深い情緒と舞曲の楽しさが詰まった協奏曲の魅力が堪能できるに違いない。戸澤采紀セバスティアン・ヴァイグレ ©読売日本交響楽団

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