eぶらあぼ 2021.8月号
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35プラチナ・シリーズ第1回 ライナー・キュッヒル~ドイツ3大B+1のヴァイオリン・ソナタ~レジェンドとたどる独ヴァイオリン・ソナタ傑作の系譜文:林 昌英9/24(金)19:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp いまから半世紀近く前のウィーン・フィルの映像で、コンサートマスターの席やその隣に座る青年が、弱冠20歳で世界最高の要職に就いたライナー・キュッヒルである。それから45年間その職を務め上げた後、NHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターに就任。伝説的巨匠たちと渡り合ってきた彼ならではの、堂々たる雄姿とホールに響き渡る強靭な音色を広く示した。 そのウィーンの“レジェンド”というべき達人が、東京文化会館小ホールでの「プラチナ・シリーズ」に登場。「ドイツ3大B+1のヴァイオリン・ソナタ」と題して4曲を披露する。「プラスワン」は「ブゾーニ」! フェルッチョ・ブゾーニは、イタリア生まれながらドイツで活躍。バッハなどの研究や編曲、ロマンと理論を兼ね備えた作品群で、独自の存在感をもつ作曲家だ。 演目も凝っている。すべてヴァイオリン・ソナタで、J.S.バッハ第3番(伴奏付ソナタ)、ブゾーニ第2番(胸に迫る佳品!)、ブラームス第1番「雨の歌」、ベートーヴェン第7番。まず2世紀近く離れた2作品でその繋がりと変化を明らかにして、ブラームスの優しい名曲からベートーヴェンの厳しいハ短調の傑作に収めていく。ブゾーニと「3大B」の組み合わせは興味深いし、ボリューム満点で聴きごたえも充分。これらを経験豊富なキュッヒルの解釈で聴けるのは何よりの贅沢だし、共演の多い加藤洋之のピアノが盤石の演奏で支えるのも嬉しい。ドイツ・ヴァイオリン作品の歴史と魅力を味わえる、意義深い演奏会になるだろう。山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団同時代に生まれた2大名曲を2大名匠で満喫文:飯尾洋一第233回 芸劇シリーズ 9/5(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp この9月、日本フィルの指揮台に立つのは正指揮者の山田和樹。6月にサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団デビューを果たすなど、ヨーロッパで活躍を続ける山田が、昨秋以来久しぶりに日本フィルに帰ってくる。 プログラムはラフマニノフのピアノ協奏曲第3番(独奏:清水和音)と、ホルストの組曲「惑星」。ロシア的な濃厚なロマンが横溢するラフマニノフと、占星術由来のイマジネーションにあふれたホルストという興味深い組合せのプログラムが組まれた。前者は1909年の作曲、後者は14年から17年にかけての作曲。テイストは異なるが、実はほぼ同時代の作品だ。 清水和音と山田和樹は今年3月に読響で初共演を果たしている。その際は、ガーシュウィンのピアノ協奏曲という、清水には意外なレパートリーだったが、今回日本フィルと共演するのは自家薬籠中のラフマニノフ。華麗で精彩に富んだソロが、作品の魅力をたっぷりと伝えてくれることだろう。ベテランの清水と、中堅世代に入った山田。世代の異なる日本を代表するスター同士の共演には、重厚感も漂う。 ホルストの「惑星」では大編成のオーケストラがスペクタクルをくりひろげる。コロナ禍以降、私たちは小編成のオーケストラに慣れすぎてしまった感がある。広大な宇宙に思いを馳せながら、スケールの大きな音楽を楽しみたいものである。加藤洋之ライナー・キュッヒル ©R-Resonance清水和音 ©Mana Miki山田和樹

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