eぶらあぼ 2021.8月号
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104CDCDCDソナチネアルバム 第2巻/佐藤卓史Danzón ダンソン/原田慶太楼&N響モーツァルト・モメンタム1785/レイフ・オヴェ・アンスネス&マーラー・チェンバー・オーケストラ 他frei aber einsam~自由だが孤独に~/岡本誠司クーラウ:ソナチネ op.55-4~6、同op.88-1,2/クレメンティ:ソナチネ op.37-2、同op.38-1~3/伝ベートーヴェン:ソナチネ Anh.5-1,2/ディアベリ:ソナチネ op.151-1~3/バッハ:インヴェンション ハ長調/ボッケリーニ:メヌエット ハ長調/シューマン:楽しき農夫/チャイコフスキー:イタリアの歌 他佐藤卓史(ピアノ)バーンスタイン:『オン・ザ・タウン』から3つのダンス・エピソード/ウォーカー:弦楽のための叙情詩/ピアソラ:タンガーソ(ブエノスアイレス変奏曲)/コープランド:バレエ組曲「アパラチアの春」/マルケス:ダンソン第2番原田慶太楼(指揮)NHK交響楽団モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、同第21番、同第22番、幻想曲ハ短調K.475、ピアノ四重奏曲第1番、フリーメイソンのための葬送音楽レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ/指揮) マーラー・チェンバー・オーケストラ マシュー・トラスコット(ヴァイオリン) ジョエル・ハンター(ヴィオラ) フランク=ミヒャエル・グートマン(チェロ)シューマン/ブラームス/ディートリヒ:F.A.E.ソナタ/C.シューマン:3つのロマンスop.22/ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」岡本誠司(ヴァイオリン)反田恭平(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-7948-9(2枚組) ¥4400(税込)日本コロムビアCOCQ-85527 ¥3300(税込)ソニーミュージックSICC-30579~80(2枚組) ¥3960(税込)NOVA RecordNR-02102 ¥3300(税込)「ソナチネ・アルバム」第1巻に続いて第2巻を収めた本作は、クーラウやクレメンティらの「ソナチネ・パート」と、バッハからチャイコフスキーまでが選曲された「小品パート」の2枚組。“ピアノ教則本の録音”というと、かしこまったイメージがあるかも知れないが、佐藤卓史の演奏は、古典派〜前期ロマン派の音楽の生き生きとした息吹を感じさせ、個々のチャーミングな小品への敬愛に満ちている。シンプルな和声や音階のようなメロディーにも、瑞々しい表現が宿る。ピアノ学習者から古典派を中心とした鍵盤音楽を愛する人まで、誰もが楽しめるアルバムだ。 (飯田有抄)急速に注目を集める原田慶太楼のN響との本格的デビュー録音はアメリカ大陸プロ。ノリのよい選曲に軽い気持ちで聴きだしたが、一聴してうなってしまった。「うまい!」。さらりと進めているようで、出てくるフレーズ、フレーズがみな磨き込まれ、聴かせどころにばっちりはまっていく。バーンスタインの華やかさ、ピアソラの妖しさ、コープランドの清々しさ―それぞれの曲の持ち味が立体感をもって鮮やかに描き出され、気がつくと耳が釘付けになっていた。この熱しすぎない情熱には、過去の演奏が土臭く感じられるような新しさがある。日本のクラシック界の新時代への期待を抱かせる一枚だ。(江藤光紀)モーツァルトの創作の転機1785年に焦点をあてたアルバム(昨年のコロナ禍に録音)。アンスネスのピアノはタッチが美しく表現の彫りが深い。ピアノ協奏曲第20番では、まずオーケストラの情念を爆発させるような勢いに感服させられる。ピアノもダイナミックで雄弁だ。第21番は高貴で典雅。冒頭楽章第2主題前後や緩徐楽章がたおやかかつ繊細でとてもきれい。第22番は大編成の華麗な響きの中で、弦と管の対比、管とピアノとの絡みなど多彩な音色の変化が楽しめる。ト短調のピアノ四重奏曲は長調と短調の間を揺れ動きながら、豊かな楽想を紡いでゆく。驚くべき進化の年に改めて気づかされる。(横原千史)ドイツでも活躍する俊才ヴァイオリニスト岡本誠司が、反田恭平が創設したレーベルから、ロマン派楽曲集をリリース。ファーストアルバムに師弟3人の共作「F.A.E.ソナタ」を選ぶだけでも、特別な思いが読み取れよう。本作の全貌を体験すると、シューマンたちが目指したものや親密な時間まで想像され、クララの美しい佳品、大家となったブラームスの名品にも同様の感興があり、一枚を通じて得られる感慨は深い。岡本は繊細で清潔な音色を保ち、ロマン派の憂愁ばかりか、清涼感まで感じさせる。反田のピアノは穏やかなのに雄弁、解釈の豊かさと確かなサポートぶりは指揮者さながらで秀逸。(林 昌英)CD

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