eぶらあぼ 2021.8月号
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100CDCDCDCDチャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」・第5番/小林研一郎&日本フィルPrayer ―祈り―/的場悟史シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、第1番/鐵百合奈ヴィオッティからメンデルスゾーンへ ヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾの世界 Vol.1/島根恵チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」、同第5番小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団伊賀拓郎:希望は続いていく/リード:バラード/ボザ:アリア/ムソルグスキー(伊賀拓郎編):モスクワ川の夜明け/ヘンデル:ラルゴ/モリコーネ(福廣秀一朗編):ニュー・シネマ・パラダイス・メドレー/真島俊夫:シーガル/ピアソラ(伊賀編):オブリビオン 他的場悟史(サクソフォン)広沢愛弓(ピアノ)シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、同第1番鐵百合奈(ピアノ)ヴィオッティ:ヴァイオリン協奏曲第22番/メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調、歌の翼に/ダヴィッド:ノクターン ヘ長調/ヨアヒム:アンダンティーノ イ短調/シューマン:私は暗い夢の中に立っていた/バイヨ:アンダンテ ニ短調島根恵(ヴァイオリン)碓井俊樹(ピアノ)島根朋史(チェロ)収録:2021年4月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00755(2枚組) ¥3500(税込)妙音舎MYCL-00019 ¥3300(税込)N&FNF29502 ¥オープンプライスコジマ録音ALCD-9221 ¥3080(税込)小林研一郎の傘寿を記念する、チャイコフスキー交響曲チクルスのライブ録音。気心の知れた日本フィルとの得意演目だが、近年の彼の境地が示されていて耳新しい。熱気は十分だが、決して激さない。炎のような情熱を内在させながら、いい意味での余裕があり、音楽が大きい。第2番では、第2楽章の一歩ずつ踏みしめ、慈しむような滋味が印象的。もちろん、第1楽章は悠然と、フィナーレは壮大に構築し、演奏機会の少ない本作の魅力を余すところなく表現する。十八番とする第5番は、緩急自在、ソロの繊細なフレーズから全奏の雄渾なエネルギーまで手中に収め、円熟味ある熱演。(林 昌英)九州を中心に活動する22歳のサクソフォン奏者・的場悟史のデビュー盤。彼は筋ジストロフィーという大病を患いながらも、多くのコンクールで入賞歴を持ち、現在車椅子にて演奏活動を行っている。本作は、彼が今まで日々愛し紡いできた楽曲をじっくりと奏でた佳品集。メロディアスで心に染みる作品が次々に登場し、どれもが柔和な音色でナチュラルかつ繊細に歌われていく。伊賀拓郎の新作や編曲も聴き応え十分。やはり九州で活躍する広沢愛弓のデリケートで優しいピアノも好演に大きく貢献している。慈しみと秘めたる熱さを感じさせる、実に美しいアルバムだ。 (柴田克彦)東京藝術大学博士後期課程を修了したピアニストの鐵百合奈。第86回日本音楽コンクール第2位、柴田南雄音楽評論賞(本賞)も2年連続で受賞した、演奏・研究ともに第一級の才媛だ。緻密なベートーヴェン研究というベースがあるからこそのシューマンのピアノ・ソナタの演奏は、作品にちりばめられた物語性と唐突な楽想変化のすべてに根拠をもたせていて理知的。旋律、和声、そして細かな各動機の関連が“見える”ように鮮やかで、様々な要素が錯綜するこの音楽の謎を読み解くような感覚になる。一方で流麗な音楽運びも鐵の大きな魅力であり、決して肩ひじ張った演奏ではない。(長井進之介)「ヴァイオリン音楽発展の歴史を感じていただけるプログラム」と演奏者の島根恵がライナーで語るように、そのコンセプトと優れた演奏内容によってこの楽器のファンは必聴だ。特に注目すべきは有名なヴィオッティの第22番の協奏曲(ピアノ伴奏版)に盛り込まれた島根によるオリジナルな装飾(非常に効果的!)、およびあまねく有名なメンデルスゾーンの協奏曲(同)。1845年に出版された際に初演者のダヴィッドによって付けられた音を出しやすいボウイングを是正すべく、作曲家自身が考えたアーティキュレーションを採用した演奏だ。上記作曲家ゆかりの珍しい併録小品も愛らしさの極み。(藤原 聡)

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