eぶらあぼ 2021.8月号
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98SACD+DVDCDCDCDアルバン・ベルク 若き日の歌/加納悦子&井出德彦ピスカ・ピスカ/ニーノ・ニーナモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番・第5番「トルコ風」/三浦文彰&オーケストラ・アンサンブル金沢高崎芸術劇場 大友直人Presents T-Shotシリーズ vol.3 岡本侑也 IN CONCERTベルク:聖なる天空、秋の想い、リンデの樹の下で、愛の歌、キバナフジの咲くところ、人間の限界、憧憬Ⅰ、影の生、遥かなる歌、愛しの美しい女、夜の歌、過ぎ去って!、夢、墓碑銘、山々を越えて、ぼくときみ、敬虔に、笛を吹く娘、逍遥、生命、酒の歌、私の両眼を閉じてください、ミニョン 他加納悦子(メゾソプラノ)井出德彦(ピアノ)兼松衆:ピスカ・ピスカ/ドルマン:ウダクレップ・アクブラド/ヨーク:三千院/レスニク:ニ・ノ・ニ・ナ/トレヴィーノ:キャッチング・シャドウズ、2+1/小野史敬:「時」の彫刻/コッペル:トッカータ/風間真:マダガシカーラ/加藤大輝:ラスト・ダンスニーノ・ニーナ【新野将之(パーカッション) 藤澤仁奈(マリンバ)】モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、同第5番「トルコ風」三浦文彰(指揮/ヴァイオリン)オーケストラ・アンサンブル金沢J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番/ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ op.25-3/デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ/カザルス:鳥の歌/黛敏郎:無伴奏チェロのための「BUNRAKU」/クラム:無伴奏チェロ・ソナタ岡本侑也(チェロ)コジマ録音ALCD-7264 ¥3080(税込)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9037 ¥3080(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84120 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCX-00089 ¥3630(税込)2013年にシューマンの後期歌曲集のCDで高評価を得たメゾソプラノ加納悦子の「ALM」第2弾。今回選んだのはベルクが15~23歳(1901-1908)の頃に書き上げて公表を押し留めていた知られざる歌曲31篇。有名な『7つの初期の歌』等はもちろん外して、瑞々しくも鮮烈な最初期から、シェーンベルク門下となって次第に無調への微かな予感を花開かせていく課程を編年収録でじっくり堪能できる。日本では上田敏訳『山のあなた』でお馴染みのブッセの詩による〈山々を越えて〉や、〈君よ知るや南の国〉で知られるゲーテ作〈ミニョン〉なども聴きどころ。音楽学者・今野哲也の解説も秀逸。(東端哲也)「ニーノ・ニーナ」は、打楽器奏者の新野将之とマリンバ奏者の藤澤仁奈によるデュオ。そのファースト・アルバムは、この2人のために書かれたものを含め、同時代の作品を集めた。ほとばしる陽光に溢れたタイトル曲に始まり、ある時は浮遊感を纏い、ある時は情熱的に、そしてまたある時は、音楽的な洒落っ気を匂わせて。まったく個性を異にする10曲の、サウンドの変幻自在さと奥行きたるや、もはや2人の奏者だけで演奏しているとは思えないほど。2つの瑞々しい感性と創意が溶け合い、時にぶつかり合うことで、決して「1+1」には留まらない、大きな可能性を創出してゆく。 (寺西 肇)人気ヴァイオリニスト・三浦文彰の弾き振りによるモーツァルト・アルバム。2曲ともに、豊潤な美音で颯爽と、かつ伸びやかに歌われたソロが魅力を放つ。しかも楽曲のフォルムが崩れない点が素晴らしく、細かな動きのスムーズな運びや明確なアーティキュレーションも光っている。カデンツァもすべて鮮やかな聴きもの。特に第5番は、ソロの入りから終始引き付けられ、第3楽章のトルコ風部分の劇的な変化も耳を奪う。振り=指揮も確かで、バックも雄弁かつ一体感十分だ。三浦の音楽性の豊かさと、モダン楽器で聴くモーツァルト音楽の喜びを味わえる好ディスク。 (柴田克彦)最初の曲、バッハの無伴奏組曲のプレリュードはまるで地の底から姿を現すように始まる。岡本のチェロは深々と歌う。少し霞を帯びたくぐもった声、まろみのある音の立ち上がり。だがそれぞれの舞曲が進むにつれて伸びやかさを増し、ヒンデミットでは無機質な音の運びにエロティックな弾力が加わって、デュティユーの激しい無窮動でひとたび頂点を迎える。カザルスの「鳥の歌」の美しいカンティレーナを経て、黛作品では三味線を模すのだが、ペチンペチンと鳴りを押さえてつま弾いても、楽器がぶるぶると贅沢に共振しているのが分かる。強度と躍動感・弾力を兼ね備えたクラム作品で閉じる。(江藤光紀)

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