92CDCDチャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」&第4番/小林研一郎&日本フィルバッハ・ピアノ・トランスクリプションズ/福間洸太朗QUARTET Ⅲ 組曲「映像の世紀」/加古隆クァルテットドビュッシーの見たもの 前奏曲集Ⅰ・映像Ⅰ/Ⅱ・喜びの島/仲道郁代チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」・第4番小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団J.S.バッハ:コラール「目覚めよ、と呼ぶ声あり」(ブゾーニ編)、シンフォニア(序曲)~カンタータ「神よ、われら汝に感謝す」(サン=サーンス編)、前奏曲とフーガ イ短調(リスト編)、シャコンヌ(ブラームス編)、アリア「憐れみ給え、わが神よ」~マタイ受難曲より(福間洸太朗編)、パッサカリアとフーガ(ダルベール編) 他福間洸太朗(ピアノ)加古隆:組曲「映像の世紀」、花は始めも終りもよろし、アヴェ・マリア~聖なるもの、母なるもの~加古隆クァルテット【加古隆(ピアノ) 相川麻里子(ヴァイオリン) 南かおり(ヴィオラ) 植木昭雄(チェロ)】ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、映像 第1集・第2集、喜びの島仲道郁代(ピアノ)収録:2021年4月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00750(2枚組) ¥3500(税込)ナクソス・ジャパンNYCC-27313 ¥2750(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84119 ¥3300(税込)収録:2020年10月、東京文化会館(小)(ライブ)ソニーミュージックSICC 19053 ¥3300(税込)昨年傘寿を迎えた小林研一郎を、お得意のチャイコフスキーの交響曲全曲で日本フィルが祝う。コロナで延期となったこの企画が4月より仕切り直してスタートしたが、その記録が早くもディスクとなった。第4交響曲でもコバケン節が炸裂、力強いエネルギーを発散するが、とりわけ胸に沁みるのは第1だ。強烈なダイナミズムで武装する以前の、初期チャイコフスキーのピュアな抒情性の発露を、息のあったコンビが的確に音にしていく。「冬の日の幻想」というタイトル通り、第2楽章では切々と訴えかけるメランコリーが、冷えた体を暖炉のように温めてくれる。魅力を再発見させてくれる一枚だ。(江藤光紀)気鋭の実力者・福間洸太朗が、10人の編曲によるバッハ作品を収録したアルバム。コロナ禍における癒しも込められており、特に安らかな楽曲が続く前半は、慈しむような表現が心に染みる。だが、サン=サーンス編「シンフォニア」やリスト編「前奏曲とフーガ」では鮮やかなダイナミズム、ブラームス編「シャコンヌ」では丹念な演奏で自然な高揚感を生み出すなど、内容は多彩。福間編の「マタイ」のアリアもしみじみと美しく、ダルベール編「パッサカリアとフーガ」も聴き応え十分だ。バッハの“ピアノ音楽”に改めて魅せられ、まさしく心も癒される、お薦めの一枚。 (柴田克彦)作曲家・ピアニストの加古隆が結成、10周年を迎えたピアノ四重奏団「加古隆クァルテット」。第3弾アルバムでは、代表作品のひとつ、NHKスペシャル『映像の世紀』の音楽から編んだ組曲を取り上げた。加古にとっては、技巧を凝らした曲を書くのは、訳もないはず。だが、ドキュメント映像の音楽とあって、ミニマル的な手法も採り入れ、あえてシンプルに。なればこそ、旋律の美しさが逆に際立つ。また、管弦楽から室内楽へと編成が変容したことで、繊細な側面が浮き彫りに。弦楽奏者たちは、時にノン・ヴィブラートで硬質な響きを求めるなど、変幻自在の創意で彩りを与える。 (寺西 肇)仲道郁代、2020年10月のリサイタルのライブ録音。「ドビュッシーの見たもの」というタイトルには「見る、聴くという感覚の先にあるものを探求したい」との想いが込められているという。空間に溶け込むような音、弾けるような音など、多彩な音色により生み出される音楽は、立体的。前奏曲集第1巻「西風の見たもの」「沈める寺」では無限に広がる空間が、映像第1集では、特別な光や肌触りが感じられる。「喜びの島」の成熟したドラマも見事。一つひとつの小品がまったく異なる感覚、気分を誘発する。まさに視覚、聴覚とは別のところが刺激されるアルバム。 (高坂はる香)CDSACD
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