eぶらあぼ 2021.7月号
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90SACDCDCDCD小沢麻由子 プレイズ ドビュッシー Ⅱカプチーノ/本田ゆりこBouquet(ブーケ)/山元香那子2つのヴァイオリンのための作品集/Duo SORELLEドビュッシー:ピアノのための12の練習曲、前奏曲集 第2巻小沢麻由子(ピアノ)J.S.バッハ:「コーヒー・カンタータ」より〈ああ!なんて珈琲は甘いのかしら〉/モーツァルト:歌劇《魔笛》より〈復讐の炎は地獄の様に我が心に燃え〉/ロッシーニ:歌劇《セビリアの理髪師》より〈今の歌声は〉/ヴェルディ:歌劇《椿姫》より〈乾杯の歌〉/R.シュトラウス:献呈、明日!/サルトーリ:コン・テ・パルティロ 他本田ゆりこ(ソプラノ) 水野彰子(ピアノ) 植木昭雄(チェロ) 金山京介(テノール)山田耕筰:からたちの花/ペヤチェヴィチ:ばら/ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ/シベリウス:カーネーション/ラフマニノフ:リラの花、ひなぎく/シューマン:花の曲/マクダウェル:睡蓮に寄す/リスト:ラ・カンパネラ/ランゲ:花の歌/チャイコフスキー:松雪草/平井康三郎:さくらさくら幻想曲 他山元香那子(ピアノ)イザイ:2つのヴァイオリンのためのソナタ/ミヨー:2つのヴァイオリンのための二重奏曲/バツェヴィチ:2つのヴァイオリンのための組曲/テレマン:2つのヴァイオリンのための組曲「ガリヴァー旅行記」、ブロブディンナグ人のジーグ/ボッケリーニ:2つのヴァイオリンのためのノットゥルノ「おやすみ」Duo SORELLE【高田あずみ 高田はるみ(以上ヴァイオリン)】ナミ・レコードWWCC-7943-4(2枚組) ¥3300(税込)妙音舎MYCL-00010 ¥3300(税込)アールアンフィニMECO-1063 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-7259 ¥3080(税込)東京藝大を経てパリのエコールノルマルで学び、ソフィア国際コンクール優勝等を契機に欧州と日本で活躍している小沢麻由子の、「前奏曲集 第1巻」に続くドビュッシー・アルバム第2弾。後期の2つの傑作が収録された音楽的濃度の高い2枚組である。まず「12の練習曲」は、クリスタルなトーンによるデリケートな表現が光っている。「前奏曲集 第2巻」は、作品の性格上さらに表情が豊かで、こまやかに描き分けられた音楽の連続に終始耳を惹き付けられる。ドビュッシー独特の響きが的確に押さえられた上で、ニュアンスに富んだ演奏が繰り広げられた好ディスク。 (柴田克彦)本田ゆりこは国立音大大学院を修了後、海外留学を経て、プロとして活躍しながら現在は東京藝大大学院研究生として更なる研鑽を積むソプラノ。学びの歩みを止めることのない彼女のデビュー・アルバムは、超絶技巧を駆使した〈夜の女王のアリア〉や〈今の歌声は〉などの名曲を集めたもの。収録曲は声と技術に高い要求を求められるものばかりだが、本田はそれらを気負うことなく、美しくコントロールされた声、ニュアンスの豊かな表現でまとめあげている。そのため重量級の内容にもかかわらず“重さ”はなく、タイトル通り“カプチーノ”を楽しむような感覚で音楽に浸ることができる。(長井進之介)まさに「音の花束」だ。山元香那子は国立音大・同大学院に学び、国内外の登竜門で実績を重ねて、社会貢献活動にも取り組む気鋭のピアニスト。世界中の「花」をモティーフにした13曲は、それぞれに違った色彩を湛え、異なる芳香を放つ。山元は一曲一曲の作品へ、繊細かつ丁寧に対峙。ピアニッシモも粒立ち良くリスナーの耳に届け、フォルティッシモにも決して音を荒らすことはない。そして、各曲の魅力を余さず掬い取り、まろやかな響きというピンク色のリボンを全体に掛けてみせる。特筆すべきは、本来は歌詞を持つ楽曲。ピアノ・ソロに「言葉」を感じさせる好演で魅せる。 (笹田和人)ヴァイオリン・デュオは、こういう演奏でこそ聴きたい。高田あずみ、はるみの姉妹デュオ「SORELLE(姉妹)」による20世紀・18世紀作品集。BCJなど古楽系団体のリーダーを務める姉と都響団員の妹は、互いのフィールドにも自在に行き来して活躍中。当盤でもモダンとオリジナル楽器を操り、表現の細部まで丁寧に磨き上げ、品格は高く、情感は豊か、理想的な共演を実現。知る人ぞ知る佳品を集めた選曲も秀逸で、どの曲も充実の好演。中でも、ナチス占領下で秘密裏に弾かれたというバツェヴィチ作品のもつ心からの快活さに、真の「音楽の強さ」というものも考えさせられる。(林 昌英)

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