eぶらあぼ 2021.7月号
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40アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団北欧のシリアスな交響曲と名技炸裂のラフマニノフ文:飯尾洋一第931回 定期演奏会Bシリーズ 7/1(木)19:00 サントリーホール 問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 東京都交響楽団の第931回定期演奏会Bシリーズに登場するのは首席客演指揮者のアラン・ギルバート。都響とはこれまでに数々の名演を聴かせてくれたギルバートだが、今回のプログラムはとりわけ興味深い。20世紀スウェーデンの作曲家ペッテションの交響曲第7番と、小曽根真をソリストに迎えたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番という意外性のある組合せだ。 ペッテションの交響曲第7番は1967年の作曲。日本で演奏されるのは84年の渡邉曉雄指揮日本フィル以来というから、ほとんどの方にとってはなじみの薄い作品だろう。第16番まで交響曲を完成させたペッテションだが、そのなかで代表作と言えるのがこの第7番。北欧の作曲家というとシベリウス的な抒情性を思い浮かべる方もいるかもしれないが、ペッテションは苦悩と葛藤に満ちたシリアスな作風を特徴とする。シベリウスやグリーグよりも、むしろマーラーからショスタコーヴィチにつながる系譜を連想させる。交響曲第7番では、悲痛さや諦念のなかにしばしば浄化された響きが立ち現れ、独自の美の世界が描き出される。 そんなペッテションがもたらす暗闇の対極にあるのがラフマニノフだ。華やかな技巧とむせかえるようなロマンにあふれたピアノ協奏曲第2番がまばゆい光を放つ。世界的ジャズピアニスト小曽根真はギルバートとも旧知の間柄。ふたりの偉才の共演はこれまでにない鮮烈なラフマニノフを生み出してくれるにちがいない。小曽根 真 ©中村風詩人アラン・ギルバート ©Rikimaru Hotta周すほう防亮介(ヴァイオリン) パガニーニ & シャリーノ、2つのカプリース超絶技巧で魅せる、2つの難曲への挑戦文:寺西 肇8/6(金)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com 緻密な技巧と高い音楽性で注目を浴びる、ヴァイオリンの俊英・周防亮介。19世紀を代表するヴィルトゥオーゾ、パガニーニそして現代の鬼才シャリーノ、2人のイタリアの大家による難曲「カプリース」へ対峙する、意欲的な無伴奏リサイタルをトッパンホールで開く。 1995年、京都府生まれ。名匠マキシム・ヴェンゲーロフの薫陶を受け、2016年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで入賞した周防。今年4月にトッパンホールに出演し、その圧倒的な名演に再登場を望む声が多数寄せられ、当公演に繋がったという。 「カプリッチョ」は、諧謔的で気まぐれな性格の器楽曲を指す。パガニーニ自ら発展させた超絶技巧が盛り込まれ、無伴奏ヴァイオリン作品の金字塔のひとつとされる「24のカプリース」。かたや、シャリーノの「6つのカプリース」は、フラジオレットの連続からの重音やポルタメントなど、現代的な超絶技巧に彩られた難曲だ。 2つの難曲を一夜にして弾き切る、壮大なる挑戦。「周防さんなら、これらの難曲をただ弾きこなすだけでなく、音楽的に表現できるはず」とのホール側からのオファーに、「コロナ禍で、以前よりも準備の時間が取れる、今のタイミングなら…」と周防は応じたという。 「音楽だからこそ、救えるものがある。言葉以上に、人の心に伝わる場面もある。とても神聖な存在です。それを伝える者として、1人でも多くの人に、その素晴らしさを届けたい」とかつて語っていた周防。災禍にある今だからこそ、心に沁みる名演を聴かせてくれるはず。©TAKUMI JUN

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