36音楽堂室内オペラ・プロジェクト ブルーノ・ジネール《シャルリー ~茶色の朝》フランス発、衝撃のオペラ10月に日本初演!文:江藤光紀10/30(土)、10/31(日)各日15:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.ongakudo-chamberopera.jp サンフランシスコ講和条約締結を記念して建てられた神奈川県立音楽堂の歩みは、国際社会に復帰した戦後日本の音楽史と重なる。大改修を終えて、新たにスタートさせたのが室内オペラ・プロジェクト。バロックから現代まで幅広いラインナップが魅力だが、第4弾となる《シャルリー〜茶色の朝》は現代社会に警鐘を鳴らす異色作だ。 権力の濫用は日常の何気ないところから始まる。ある日、茶色以外のペットを飼うことが禁じられ、それはみるみるうちに厳しい取り締まりに発展していく…。 欧州での極右勢力の台頭を受けて書かれた寓話を、ブルーノ・ジネールがソプラノと5人の奏者からなるオペラに仕立てた。ジネールは現代フランスを代表する作曲家の一人だが、ナチ時代に抑圧された作曲家の掘り起こしにも積極的だ。本作の「茶色」もナチを象徴しているのだろう。 今回の上演はジネールの活動姿勢を伝えるべく三部構成となっており、まずはナチ時代にアメリカに亡命した作曲家パウル・デッサウの作品と、それに基づくジネールの作品が演奏される。《シャルリー》日本初演の後には、ジネールを囲み作品の背景を重層的に読み解くクロストークも予定されている。演奏はジャンル越境的な上演に積極的に取り組む「アンサンブルK」。作曲家の推薦により、ジネールともどもの来日となる。 朗読会・絵画ワークショップ・広報インターンなど関連企画も充実。今秋の日本におけるフランス祭の中核となる企画として、地域と世界をつなぐ意欲的公演だ。オペラ《シャルリー 〜茶色の朝》より ©derrière Rideauジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団名コンビ夏の再開、オケのパワー全開!文:林 昌英第692回 定期演奏会 7/17(土)18:00 サントリーホール川崎定期演奏会 第81回 7/18(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 順調に蜜月関係を築いてきた東京交響楽団と音楽監督ジョナサン・ノットだが、昨年以来、「第九」公演以外は思うように共演が叶わなくなり、歯がゆい日々が続いた。この5月も、前半は予定通りの来日ができなかったものの、下旬の特別演奏会2公演には間に合い、ついに本格的な公演での再会が実現した。筆者はマーラー「巨人」の日を聴けたが、演奏はもちろんのこと、ノットが「ただいま」「ありがとう」のメッセージを掲げたカーテンコールの盛り上がりは実に感動的だった。 そして、早くも7月、定期演奏会での再共演が実現する。同コンビによる定期は2019年11月以来で、実に1年8ヵ月ぶりに“通常”のステージが戻ってくるのだ。演目は予定通りの2曲。まずR.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。彼らが幾度も名演を聴かせてきた作曲家であり、今回も明晰さと熱気を兼ね備えた快演になるに違いない。また、チェロ独奏を伊藤文嗣、ヴィオラ独奏を青木篤子、東響首席奏者のふたりが務めるのも注目。それぞれ国内屈指の名ソリストとしても知られていて、その力量を存分に堪能できる嬉しい好機となる。もう1曲はシベリウスの交響曲第5番。“ノットのシベリウス”は稀少だが、満を持して選ばれたのは、自然への感動と人生の喜びが込められた、胸を打つシンフォニー。しかも、第1稿は第一次大戦中、通常演奏される第2稿はスペインかぜの世界的流行期に書かれている。今こそ新たに感じとりたい名作のメッセージ、ノットと東響による万感の名演で。伊藤文嗣青木篤子ジョナサン・ノット ©T.Tairadate/TSO
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