31池辺晋一郎 プロデュース日本の現代音楽、創作の軌跡 第3回「1931年生まれの作曲家たち」同い年の6人の作品から俯瞰する戦後楽壇の道程文:伊藤制子7/13(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp 一昨年の第1回開催から大きな反響のあった企画「日本の現代音楽、創作の軌跡」。東京オペラシティ文化財団ミュージック・ディレクターをつとめる池辺晋一郎のプロデュースで、我が国の戦後の創造の歩みを振り返るシリーズである。第3回となる今回は、1931年生まれの作曲家が特集される。この世代は、10代の多感な時期に終戦を迎えて価値観の一変に遭遇した。そして、戦後の欧米の新しい潮流や日本の映画産業の活況などに刺激を受けながら、自身の創作を鍛え上げてきた生命力あふれる世代だ。こういった作曲家から、さまざまなユニークな作品がとりあげられる。 映画産業黄金時代に活躍しつつ、様々な書法の可能性も追求した池野成の「八重奏曲」、ドラゴンクエストの作曲家としても名高いすぎやまこういちの「迷子の青虫さん」からの抜粋など、粋な選曲が並ぶ。さらに指揮者としても一時代を築いている外山雄三の「室内協奏曲」、こんにゃく座で日本語の新しい可能性を追求した林光の「72丁目の冬」も楽しみである。そのほか、戦後の前衛音楽の斬新な手法を通じて、未知の響きを探求し続けた篠原眞の「波状A」、実験的な創作で知られる松平頼暁の「領域」と、多彩な作品がラインナップされた。 ずらりと並んだ出演アーティストの名前を眺めると壮観である。今をときめくピアニストの金子三勇士、現代作品の演奏でも定評のある成田達輝ら名手がそろう。時代を超えた諸作品に新たな息吹を与えてくれる一夜になるだろう。金子三勇士 ©Ayako Yamamoto成田達輝 ©Marco Borggreve池辺晋一郎 ©東京オペラシティ文化財団 撮影:武藤章新国立劇場《カルメン》(新制作)世界が注目する新演出! 鬼才オリエが描く現代版《カルメン》文:井内美香7/3(土)14:00、7/6(火)18:30、7/8(木)14:00、7/11(日)14:00、7/17(土)14:00、7/19(月)14:00 新国立劇場 オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/他公演 7/31(土)、8/1(日) びわ湖ホール(077-523-7136) 2019年の《トゥーランドット》で巨大なセットと衝撃的なラストが話題になったアレックス・オリエが、7月に新国立劇場に再登場し、自国スペインを舞台にした《カルメン》を新演出する。 ビゼーの名作オペラ《カルメン》。オリエはストーリーを現代に移し、カルメンをショー・ビジネスの中にいる歌手だと設定した。「カルメンは、力、喜び、勇気、反骨心、自由の象徴です」「カルメンの物語は、時代を超え、これまで200年の歴史の間に女性が勝ち取ってきた権利の象徴ともいえます」。 《トゥーランドット》では現代を反映したジェンダー観で物語の結末を見直したオリエ。今回もその視点は共通しているようだ。そして、カルメン像を作り出すインスピレーションとなったのが英国出身のヴォーカリストで、やはり若くして悲劇的な死をむかえたエイミー・ワインハウスだという。あの一声聴けば鳥肌が立つようなワインハウスの魂の歌が、カルメンの姿に重なるとは何とも刺激的なアプローチだ。 新国立劇場の公演は《トゥーランドット》でもコンビを組んだ芸術監督の大野和士がタクトをとる。フランスから参加予定の二名を含む豪華キャストだ。そして、この《カルメン》の舞台はびわ湖ホールでも上演され、指揮は同ホール芸術監督の沼尻竜典でキャストには日本の一流歌手が揃う。オーケストラはいずれも東京フィル。新国立劇場合唱団とびわ湖ホール声楽アンサンブルが合同出演するのも楽しみである。大野和士アレックス・オリエ
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