eぶらあぼ 2021.7月号
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19 まずは川崎市をフランチャイズとし、サマーミューザのホスト・オーケストラを務める東京交響楽団。音楽監督ジョナサン・ノットによるひねりの効いたフランス・プログラムで開幕を飾る(7/22)。ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」をコンスタン編の管弦楽版で聴く機会は貴重。しかしもっと貴重なのはヴァレーズの「アルカナ」だ。大編成のオーケストラがくりだす激烈な音響は初演時に「音の恐怖」と評されたが、作曲者は「喜びの音楽」と述べたといわれている。ノットはその「喜び」を引き出してくれるはず。さらに萩原麻未の独奏によるラヴェルのピアノ協奏曲と、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」も楽しめるというぜいたくさ。気鋭の指揮者と人気ソリストたちの競演 東京交響楽団はフィナーレコンサート(8/9)にも登場する。こちらは同楽団正指揮者に就任した気鋭、原田慶太楼がジョン・アダムズの「アブソルート・ジェスト」(共演はカルテット・アマービレ)、吉松隆の交響曲第2番「地球にて」ほかを指揮。こちらもノットに負けずに意欲的なプログラムで、ホスト・オーケストラの攻めの姿勢は際立っている。 オーケストラ・アンサンブル金沢を率いるのは桂冠指揮者の井上道義(7/25)。名コンビが帰ってくる。プログラムはシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番(独奏は神尾真由子)、古典交響曲。室内オーケストラならではの機敏で小気味よいアンサンブルを満喫できるだろう。 東京都交響楽団が指揮台に迎えるのはアジアの新星、カーチュン・ウォン(7/26)。コロナ禍のなか、日本各地のオーケストラに客演して人気も急上昇中の若きマエストロだ。チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」(チェロ独奏は岡本侑也)、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」ほかを指揮する。カーチュンがまっすぐでポジティブなエネルギーを作品に注ぎ込む。 読売日本交響楽団は、首席客演指揮者の山田和樹が初登場の予定だったが、コロナ禍の入国制限のため欧州から帰国できず、無念の降板となる。高関 健 ©Masahide Sato鈴木雅明 ©Marco Borggreve萩原麻未 ©Marco Borggreve神尾真由子 ©Makoto Kamiyaカーチュン・ウォン ©Angie Kremer岡本侑也 ©Shigeto Imura篠崎史紀井上道義 ©高木ゆりこカルテット・アマービレ ©T.Tairadate

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