86CDCDブルックナー:交響曲第8番 ハ短調/高関健&東京シティ・フィルドルチェ・フェリーチェ/小林侑奈ラ・ノスタルヒア/池田慎司野本哲雄プレイズ展覧会の絵ブルックナー:交響曲第8番(ハース校訂による原典版)高関健(指揮)東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団バッハ/ヴィヴァルディ:シチリアーノ/レスピーギ:6つの小品より、リュートのための古風な舞曲とアリア第3集~シチリアーナ/リスト:ペトラルカのソネット第123番/タールベルク:ベッリーニ《ノルマ》~清らかな乙女よ/ベリオ:水のピアノ/リゲティ:フレスコバルディへのオマージュ 他小林侑奈(ピアノ)バリオス:カーサパ、森に夢見る、ワルツ第3番、同第4番、追憶のショーロ、マシーシ、告白(ロマンサ)、フリア・フロリダ、大聖堂、アンデス組曲より、ワルツ第2番「君の心のほとりに」池田慎司(ギター)J.S.バッハ:パルティータ第2番/ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」/チャイコフスキー:舟歌(「四季」より〈6月〉)野本哲雄(ピアノ)収録:2020年8月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)ブレーン・ミュージックOSBR-37016-17(2枚組) ¥2970(税込)アールアンフィニMECO-1062 ¥3300(税込)OMFKCD-2081 ¥3000(税込)ナミ・レコードWWCC-7942 ¥2750(税込)2020年、演奏会が消え、再開後も大曲は困難とされた時期、高関健と東京シティ・フィルが久々の聴衆入りの定期に選んだのは、ブルックナー第8番。大きな挑戦の場、咳もできない緊張感の中、彼らはこれまで通り誠実に、ひたむきに、温かく、ブルックナーの深淵を追求した。高関ならではの精妙なバランスは保ちつつ、各楽員の思いを丁寧にまとめ、ときに開放し、作品のもつ感動と一体化する。時代の記録にして、同作の演奏史に新たに加わる名演となった。また、万感の拍手や楽章間の空気をカットせず、当日の全出演者名を掲載するなど、アルバム制作の姿勢も、特筆して熱烈に支持したい。(林 昌英)小林侑奈は桐朋学園大学卒業後、イタリアで研鑽を積んだピアニスト。日本とイタリアを中心に演奏活動を展開し、ソリスト、室内楽奏者として確かな存在感を示している。そんな彼女のデビュー盤はイタリアにフォーカスした内容。レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」やリストの「ペトラルカのソネット」など、豊かな旋律性と美しいハーモニーの作品が並ぶが、タールベルクやリゲティなどの技巧的で先鋭的な響きの楽曲を効果的に織り交ぜ、よくある名曲集とは一味違うプログラムを構成。歌心に溢れ、舞曲を得意とするリズム感の良さが光る演奏は作品の魅力を余すことなく伝える。(長井進之介)「はじめて聴いた曲なのに、どこかで聴いたことがあるような…」。パラグアイの作曲家でギタリスト、詩人でもあったアグスティン・バリオス=マンゴレ(1885~1944)の音楽について、池田慎司は綴っている。その通りだ。第1音から聴く者の心を満たす、甘く、切ない郷愁。スペインに学び、福岡を拠点に活躍する名手は、その魅力を余さず、丁寧に掬い取る。いったん音を出せば、減衰してゆくしかない、儚きギターの調べ。しかし、池田は音の余韻を巧みに操ることで、永遠の生命を与えてゆくよう。今年3月に逝去された、濱田滋郎氏による、温かく、愛情にじむ解説文も、当盤にさらなる余韻をもたらす。(寺西 肇)思慮深く、入念に仕上げられた演奏。パルティータ冒頭のシンフォニアから、この人の音楽観がダイレクトに伝わってくる。重厚かつ敬虔にはじまった歩みは、音をぴんと粒だたせた優美なステップを経て、声部がエネルギーを受け渡しあうフーガへと発展していく。「展覧会の絵」も考え抜かれていて、タッチを細やかに使い分けることで、各フレーズをどう解釈しているのかが明快に伝わってきた。絢爛たる演奏効果に傾く解釈が多いなか、一見地味に感じるけれど、丁寧なアプローチは見知った曲への新たな気づきを促してくれる。「舟歌」でしっとりと閉じたのも一貫性が感じられ、とても納得した。(江藤光紀)SACDCD
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