eぶらあぼ 2021.6月号
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84CDCDチャイコフスキー:弦楽セレナード/チェンバー・ミュージック・プレーヤーズ・オブ・トウキョウLicht―大中恩歌曲集―/春日保人&小原孝&北原聖子レフト・オブ・ショパン―祈りのためのピアノ作品集―/沼光絵理佳チャイコフスキー:弦楽セレナード/メンデルスゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調/モーツァルト:ディヴェルティメント K.136チェンバー・ミュージック・プレーヤーズ・オブ・トウキョウ【永野光太郎(ピアノ) 須山暢大(ヴァイオリン) 他】シューマン:ピアノ・ソナタ第1番、幻想曲 ハ長調毛翔宇(ピアノ)大中恩:歌曲集「おもろうて」、バリトンのための歌曲集「ユダ 哀しい裏切」、ソプラノとピアノのための3つのソネット「アマリリスに寄せて」、こんなしずかな晩は、じゃあね春日保人(バリトン)小原孝(ピアノ)北原聖子(ソプラノ)フランク:前奏曲、コラールとフーガ/ショパン:練習曲第2番、前奏曲第15番「雨だれ」、スケルツォ第2番、ノクターン第20番、バラード第4番/近藤浩平:海辺の雪~震災と津波の犠牲者への追悼、ひとのふるさと~左手のソロの為の/ラフマニノフ(沼光絵理佳編):ピアノ協奏曲第2番 他沼光絵理佳(ピアノ)収録:2020年12月、紀尾井ホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00751 ¥3520(税込)コジマ録音ALCD-9226 ¥3080(税込)妙音舎MYCL-00005 ¥2750(税込)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9036 ¥3080(税込)大阪フィルのコンサートマスター須山暢大を中心として、国内の楽団やソロで活躍する若手奏者が集まった気鋭のアンサンブル。昨年12月の紀尾井ホール公演は、弦楽合奏曲を中心に、アグレッシブな姿勢と澄んだハーモニーを存分に聴かせた。スタイルは正攻法で、豊かな低弦に乗って各パートが朗々と歌って気持ち良い。特にチャイコフスキーの名作で発揮される熱気とテクニック(ヴィオラのキレ!)はすばらしく、各人のハイスペックぶりも頼もしい。こういった室内オーケストラが、常設の楽団に刺激を与えていってほしい。協奏曲はソリストたちの研ぎ澄まされた表現と温かみが心に残る。(林 昌英)中国出身の国際的名手が、シューマン20代の力作をダイナミックかつ緻密に描いた一枚。ソナタ第1番は、各楽章の性格が明快に表出され、曲の魅力がストレートに伝えられる。ソナタもそうだが、特に「幻想曲」ではタッチと表現の明確さが際立っており、“幻想味を湛えたソナタ(同曲はもともとそうだった)”の如き構成感や力感が新鮮な感触をもたらす。また第3楽章の最後が、通常版とは異なる当初の形(第1楽章の最後と同じ一節)で弾かれている点も特筆される。全体を通して、透徹したピアニズム、堅牢な構築、豊かな詩情の共生に魅せられる、注目のディスク。(柴田克彦)大中恩の歌曲には、常にあたたかいまなざしが感じられる。彼の作品は、詩に描かれた情景、込められた想いによりそうように、やさしく語りかけるような旋律が与えられているからであろう。演奏者の春日保人は大中の音楽から「光」を感じると述べているが、実際に春日と北原聖子の歌唱、そして小原孝のピアノが紡ぎ出す音は、やさしい光を灯すように作品の魅力を伝える。春日は「ユダ 哀しい裏切」で揺れ動く心のありようを鮮やかに歌い上げ、北原は「アマリリスに寄せて」で包み込むような歌声によって作品に溢れるやさしさを丁寧に伝える。日本語の美しさ、色彩の豊かさを改めて実感できる一枚だ。(長井進之介)フジテレビ系のドラマやアニメ『のだめカンタービレ』の音楽演奏を行い、ソロやオーケストラとの共演、室内楽において幅広く活躍する沼光絵理佳のデビューアルバム。映画『にしきたショパン』用に沼光によって編曲・演奏されたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のピアノ独奏版は第1楽章と第3楽章を違和感なく巧みに接続、オーケストラパートの表現もまたダイナミックで秀逸。アルバムで多数を占めるショパンにおいても基本的に落ち着いたテンポで各部の表情を深く掘り下げており見事なものだ。ラフマニノフ同様『にしきた〜』で用いられた近藤浩平の「ひとのふるさと」も傑作だ。(藤原 聡)SACDCDシューマン:ピアノ・ソナタ第1番、幻想曲 ハ長調/毛もう翔しょう宇う

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