82CDCDCDCDベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調/クルレンツィス&ムジカエテルナフランソワ・クープラン クラヴサン曲全集 1/中野振一郎プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番/反田恭平&佐渡裕&トーンキュンストラー管1―ワン― 福田進一 ギター・ディスカバリー・シリーズ Ⅴ/岡本拓也ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調テオドール・クルレンツィス(指揮)ムジカエテルナクープラン:クラヴサン曲集第1巻第4オルドル・第2巻第6オルドル・第7オルドル・第3巻第17オルドル・第18オルドル・第4巻第21オルドル・第25オルドル、クラヴサン奏法 前奏曲第7番・第3番・第4番・第8番中野振一郎(チェンバロ)プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番佐渡裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団反田恭平(ピアノ)カラハン:3つの川辺の情景/バリオス:母へ、大聖堂、祈り/ソル:練習曲op.6-11/クレンジャンス:2つの舟歌/パリエール:プレリュード/ヴィラ=ロボス:12の練習曲第4番、同第1番、5つの前奏曲第5番/メセニー:「4つの光の道」より〈1〉、ハヴ・ユー・ハード(閑喜弦介編) 他岡本拓也(ギター)ソニーミュージックSICC-30566 ¥2420(税込)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9032,33(2枚組) ¥3300(税込)NOVA RecordNR-02101 ¥3300(税込)マイスター・ミュージックMM-4091 ¥3300(税込)鬼才クルレンツィスのベートーヴェン第2弾。交響曲第7番は、ピリオド・アプローチの粗野な響きで激しく前進駆動する。序奏終わりのfpは短く鋭い。主部のトゥッティは推進力が凄まじく攻撃的だ。内声の自発的で即興的な強調も独特。第2楽章の主題のppは驚くほど小さく、中間のまろやかな木管の下のバスのピッチカートは太鼓のように響く。フガートも精緻できれい。スケルツォのリズムの切れ味とノリの良さは抜群で爽快だ。トリオはかなり速い。終楽章は反復をすべてやっても冗長にならず、むしろ興奮を高める効果を発揮してやまない。現代最高のベートーヴェン。(横原千史)名手・中野振一郎が、長年の念願だった、仏バロックの大家フランソワ・クープランのクラヴサン(チェンバロ)作品全集の録音へ遂に着手。第1弾では、「クラヴサン曲集」全4巻から7つのオルドル(組曲)と、「クラヴサン奏法」から4つの前奏曲を収録した。特に抜粋の形で取り上げられる機会が多いオルドルに関して、「全楽章を通してこそ、その本当の姿が伝わってくる」と中野。時に心地よい音楽の揺らぎを纏わせ、心のままに弾いているかに思わせて、実は緻密な計算に基づき、組曲として端正な全体像を創出。オルドルごとに異なる色彩も、鮮やかに描き分けてみせる。(笹田和人)近年共演を重ねる佐渡裕と反田恭平。2020年11月、反田にとってウィーンデビューとなった、トーンキュンストラー管弦楽団定期演奏会への出演の際に行われた録音。ロックダウン直前、さらにはシュテファン大聖堂付近で銃乱射事件が起きるという非常事態の中の演奏だったという。このコンビとなれば爆裂の演奏かと思いきや、ウィーンの空気がそうさせるのか、しなやかで底力がありつつ気品あるプロコフィエフが収められている。反田が確かなタッチで奏すスピード感のあるパートも良いが、忍び足のオーケストラを引き連れてゆったり進む妖しげな部分が魅力的に響く。 (高坂はる香)マイスター・ミュージックにおいて福田進一がプロデュースする「ギター・ディスカバリー・シリーズ」の4人目は岡本拓也。選曲がユニークで、バリオスやソル、ヴィラ=ロボスらに加えパット・メセニーやカラハン、パリエール、クレンジャンスといったほぼ「未知の」作曲家が取り上げられている。岡本の演奏は明晰かつ颯爽としており、情緒的というよりは運動性に富んだ表現が印象的。その意味では末尾に収録されたメセニー作品がまさに岡本にぴったりで、こういったグルーヴ感はそれまでの「クラシックギタリスト」にはなかなかないもの。「定番曲」も新鮮さに満ちる。 (藤原 聡)
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