eぶらあぼ 2021.6月号
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33アストル・ピアソラ生誕100年祭! 三浦一馬キンテート7/6(火)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/三浦一馬(バンドネオン)精鋭たちとともに体現する「現代におけるピアソラ」取材・文:原 典子Interview 今年はアストル・ピアソラの生誕100年のアニヴァーサリーということで、気鋭のバンドネオン奏者、三浦一馬にとってはいつにも増して充実した年となりそうだ。なかでも7月に浜離宮朝日ホールで開催される三浦一馬キンテートによる公演は、“これぞピアソラ!”と言うべき代表曲が目白押しのプログラムで、その魅力を十二分に味わえる。 「キンテート(五重奏)とは、ピアソラ自身が生涯にわたって探究したバンド編成。バンドネオンはソロで演奏すると内に向かって凝縮した響きになりますが、より上と下に広がりが欲しいと思ったとき、やはりピアノやヴァイオリンは欠かせません。さらにコントラバスの強靭な低音と、中音域をとりもつエレキギターを加えた、非常にバランスのとれた編成だと言えるでしょう」 石田泰尚(ヴァイオリン)、山田武彦(ピアノ)、髙橋洋太(コントラバス)、大坪純平(ギター)という精鋭揃いのキンテートで体現したいのは「現代におけるピアソラ」。そのためには演奏はもちろんのこと、三浦自身の手による編曲作業も重要なファクターとなってくる。 「ピアソラのオリジナルの演奏を極力尊重しながらも、自分のフィルターを通したものを譜面に落とし込んでいく過程で、おのずと現代性は入ってくると考えています。僕にとっては演奏と同じくらい、編曲したり譜面をおこす時間は大切なもの。その作業を通してイマジネーションが芽生えて、演奏にフィードバックされることも多いです。正直なところ、演奏家として毎日ひたすら練習だけしていたら、ここまで楽しく続けてこられたかな? と思うことも。ピアソラはバンドネオン奏者としてだけでなく、作曲家として、さまざまなジャンルの音楽を融合してタンゴに革命を起こしたマルチなアーティストでしたが、僕もそういったマルチな才能に惹かれる傾向があります」 「ブエノスアイレスの夏」「リベルタンゴ」「オブリヴィオン(忘却)」など、クラシックの演奏家によってオマージュされてきた曲も多く、ピアソラ初心者にもおすすめ。 「とくにここ数年、自分なりのピアソラというものが見えつつあるような気がしているんですよね。だからこそ、この生誕100年という節目の年に、ぜひ新しいピアソラを聴いていただきたいなと。一度でも生で聴くと、誰しも虜になってしまう魔法のような曲がたくさんありますから、きっとのめり込むと思いますよ。本能にまで訴えかけてくるような、そんな音楽です」第160回 リクライニング・コンサート 加耒 徹 バリトン・リサイタルバリトンの魅力が詰まった至福の時間を味わう文:宮本 明 Hakuju Hallのリクライニング・コンサートに、明るく響く清潔な声とスタイリッシュな容姿で人気のバリトン加耒徹が登場する。オペラからコンサート、バッハの宗教曲からミュージカル・ナンバーまで、どんなジャンルも自然に歌いこなすセンスを備えた優れた音楽家だ。 今回は歌曲プログラム。言葉の解釈と扱い、演劇性と声楽的なコントロールのバランスなど、細部まで聴きどころ満載のジャンル。現時点で明らかにされている曲目は、ヴォーン・ウィリアムズの〈リンデン・リー〉、ブリテン編曲の7/14(水)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp©Hiroki Watanabe〈グリーンスリーヴス〉、シューマン〈二人の擲弾兵〉だけだが、これを見るだけでもありふれた歌曲リサイタルではなさそうな予感が濃厚に漂う。「眠ってもいいですよ」という画期的なコンセプトのリクライニング・コンサートだが、寝ている場合ではないだろう。 すでに500曲超を共演してきたというピアノの松岡あさひとともに、至福の1時間を堪能させてくれるにちがいない。

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