eぶらあぼ 2021.6月号
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32高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団現代稀なるブルックナーの真髄に浸る文:柴田克彦第342回 定期演奏会 6/16(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 高関健と東京シティ・フィルのコンビが7年目のシーズンを迎えた。東京オペラシティでの定期演奏会の開幕を飾る6月公演の演目は、ブルックナーの交響曲第5番。これはマニアならずとも注目のコンサートだ。 2015年に高関健が常任指揮者に就任して以来、東京シティ・フィルの進化は目覚ましい。緻密な構築で楽曲の本質を表出する名匠のもとでグングンとクオリティをアップ。近年はオーケストラ全体に表現意欲が漲っており、演奏の密度と聴く者に与える充足感の高さにおいて、在京楽団の中でも屈指の存在となっている。その好例ともいうべき名演が、昨年8月のブルックナーの交響曲第8番。スコアに精通した高関と、現・桂冠名誉指揮者である飯守泰次郎のツィクルス等で同作曲家の精髄を会得している東京シティ・フィルが一体となった、濃密で集中力の高い演奏、雄大で重厚な音楽が展開され、当コンビ初のCD化もなされた。 となれば第5番への期待も大きい。この曲は、対位法の巨匠が持てる技術を最高度に発揮した、細密にして荘厳な、大伽藍の如き音楽。交響曲の大家の魅力が集約された“最もブルックナーらしい交響曲”であり、その意味では第8番と双璧をなしている。高関は、オルガン的な響きと堅牢な構成によって“ブルックナーらしいブルックナー”を聴かせる、現代稀なるマエストロ。その特質が第5番で最大限に生きるのは言うまでもない。高関の精緻かつ大スケールのアプローチと、それに応える東京シティ・フィルの気迫に満ちたサウンドが生み出す壮麗な世界=ブルックナーの真髄を、ぜひとも体験したい。高関 健 ©上野隆文トッパンホール ランチタイムコンサート Vol.110 尼子裕貴(ピアノ)バッハからロマン派まで、みずみずしい感性で描き出す文:片桐卓也6/17(木)12:15 トッパンホール ※事前申込制問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com 日本のクラシック音楽界をこれからリードしていくことになる若手演奏家が次々と出演することで、多くの音楽ファンの注目を集めているトッパンホールの「ランチタイムコンサート」。まさに昼どきの12時15分スタート、その第110回公演(6/17)にピアニストの尼子裕貴が出演する。 実は、尼子は昨年11月の同コンサートにヴァイオリンの東亮汰の共演ピアニストとして出演した。その時のブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番の演奏では、ドイツ音楽の王道と言うべき作品に真剣に向き合い、みずみずしい歌心と柔軟な音楽性に満ちた演奏が高く評価された。そして今回は、ソロでバッハとロマン派の作品を取り上げることとなった。バッハの「トッカータ ホ短調 BWV914」、シューベルトの「4つの即興曲集 D899」より第3番、そしてブラームスの「4つの小品 op.119」というラインナップだ。コンサートには「バロックからロマン派へ~音楽の歴史に歌を重ねて」というサブタイトルがつけられている。 尼子は桐朋学園大学に特待生として在学中で、第87回日本音楽コンクール第3位に入賞、岩谷賞(聴衆賞)を獲得するなど活躍をみせており、ソロだけでなく室内楽にも積極的に取り組んでいる。鍵盤楽器のための作品の中に潜む“歌”の魅力を新鮮な感性で描き出す、彼の演奏に触れてみよう。©TAKUMI JUN

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