eぶらあぼ 2021.6月号
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31広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団勢いに乗るベテランと新鋭が描くブルックナーとドヴォルザーク文:林 昌英第731回 東京定期演奏会〈春季〉6/11(金)19:00、6/12(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp 広上淳一は、いま最も幅広く活躍している指揮者といって差し支えないだろう。だが、これまで彼のブルックナーを聴ける機会はほとんどなかった。それが6月の日本フィル東京定期でついに実現する。選ばれたのは第6交響曲。60分程度、2管編成、ブルックナーとしては大規模ではない楽曲だが、他のどの番号とも違うユニークな楽想と、絶美の緩徐楽章をもつ魅力作だ。古典派からロマン派までスケールの大きな名演を連続している広上が、まさに満を持して臨むブルックナー。荒々しさと透明感が両立する第6番で、どんな世界を構築してくれるのか。 公演前半は変更になり、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲に。ソリストはヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール第2位などの入賞歴をもち、国内外で活躍する小林美樹。広上&小林&ドヴォルザーク、既視感が…そう、3月の東京シティ・フィル定期で同じ組み合わせが実現したばかり。再演は苦肉の策? いえいえ、とんでもない! それどころか、3月公演は同曲の類まれなる快演で、その成果をより広く示したいという意欲の表れだろう。小林はフレッシュな美音とアグレッシブな名技が際立ち、同曲の魅力を万全に引き出す。特筆したいのは広上の指揮ぶりで、小林との丁々発止のやりとりは抜群、オーケストラからはかつてないほどの表現やメッセージを抉り出す。特に低弦のビートを効かせまくった舞曲的場面の楽しさは、聴きながら(観ながら)思わず笑顔になってしまうこと請け合い。2曲とも聴きどころ満載、必聴の演奏会だ。東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 濵はまじ地 宗かなめホルン界の新旗手が挑む“現代の歌”文:柴田克彦6/15(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp 注目のホルン奏者・濵地宗が、東京オペラシティの「B→C」に登場する。東京藝術大学出身の彼は、第86回日本音楽コンクール優勝、第10回チェジュ国際金管打楽器コンクール(日本人ホルン奏者初)優勝の実績を誇り、東響、東京フィル等の著名楽団やソリストとの共演、内外の音楽祭やメディアへの出演など多方面で活躍。神奈川フィルを経て、現在群馬交響楽団の首席奏者を務めるほか、なにわ《オーケストラル》ウィンズ、The Sixth Senseのメンバーも務め、スタジオミュージシャンとして様々なレコーディングにも参加している。 かくも引く手数多の彼にして、東京でのリサイタルは今回が初。それだけにプログラムも盛りだくさんだ。「B=バッハ」に比較的珍しい「歌」の曲が並ぶ点や、ソプラノ歌手(鈴木玲奈)をまじえたシューベルトの〈流れの上で〉が置かれている点が目を引くし、「C=コンテンポラリー」には、ペンデレツキ、バルボトゥ、ベッケルJr.、ホリガーの難曲、そして指揮者・沼尻竜典および映画やアニメが主戦場の沢田完への委嘱新作と多種多様な作品を連ねた、意欲的な内容となっている。ここに共通するのは「様々な言語や文化を昇華させた歌」(本人)。すなわち「ホルンでテキストを表現してみたい」との思いが込められている。確かに濵地は、スムーズな技巧、まろやかな音色と滑らかな運びで“ホルンの歌”を聴かせる奏者。今回はその持ち味が高度な領域で発揮されるコンサートと言っていい。ピアノの共演は中桐望。 次代を担う奏者がさらなる高みを目指して挑むこのステージ。これは楽曲、演奏ともに期待度満点の一夜だ。小林美樹 ©Kayoko Yamamoto広上淳一 ©Masaaki Tomitori

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