eぶらあぼ 2021.6月号
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26下野竜也(指揮) 東京都交響楽団初夏にお届けする新鮮でボリューミーな名曲選文:江藤光紀プロムナードコンサート No.3926/19(土)14:00 サントリーホール 5月中旬発売予定問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 6月の都響プロムナードコンサートは、晴れがましい音のスペクタクルで幕を開ける。ヘンデル「王宮の花火の音楽」は、戦争の終結を祝賀する式典のために書かれた作品。野外上演を前提にトランペットをはじめとする金管楽器、ティンパニが平和の到来を告げる。この序曲をベインズ&マッケラス校訂の大編成バージョンで。 続いてミレニアム生まれ、現在はウィーンで学ぶ大関万結の独奏で、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番。ブルッフのコンチェルトというと第1番が有名だが、サラサーテが初演した本作もロマン派協奏曲の魅力が満載だ。どんどん成長する年代のアーティストには、今しか聴けない表現に触れる楽しみがあるが、国内でのキャリアから翼を広げた大関が、本場で吸収しているものを見届けたい。 そしてメイン・ディッシュはボロディンの交響曲第2番。ボロディンは医者・科学者としても活躍し、余暇に作曲したため作品数は多くないが、その音楽はロシア的な抒情性やダイナミズムを湛えている。この交響曲は力強いテーマで始まり、作曲者自身が「勇者」と呼んだと言われるが、軽快なスケルツォ、たっぷりとしたアンダンテ、賑やかで楽しいフィナーレと、シンフォニーの魅力、そしてボロディンらしさがぎっしりと詰まっている。 名曲として知られながら、演奏機会は決して多くはない曲を組み合わせた。下野竜也の見通しのよい音楽運びが、それぞれの持ち味を引き出してくれるだろう。爽やかな休日の午後となりそうだ。ワークショップ「カイヤ・サーリアホが描く音風景」サーリアホの世界観をトークと演奏で解き明かす文:伊藤制子6/1(火)18:30 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 希代のオペラ作曲家として高い評価を受けているフィンランドのカイヤ・サーリアホ。6月6日に東京文化会館で、彼女の話題のオペラ《Only the Sound Remains -余韻-》が日本初演されるのに先立ち、6月1日にワークショップ「カイヤ・サーリアホが描く音風景」が開催される。オペラの深遠な世界を体感し、より理解を深めるための予習として、絶好の機会となろう。 当日の前半はミニコンサートで、サーリアホのフルートとカンテレによる「ライト・スティル・アンド・ムービング」他の器楽曲が演奏される。エイヤ・カンカーンランタが奏者を務めるカンテレは、ツィターのように指で弦をはじいて音を出すフィンランドの伝統楽器。シンプルな五弦程度のものから、数十弦のものまであり、ソロでも魅力を発揮してきた。民族叙事詩「カレワラ」にも登場し、同国に根付く民族精神を反映している存在であることから、サーリアホの創作の根源にもふれることができるだろう。 後半は《Only the Sound Remains -余韻-》についての対談。オペラは能にもとづく二部構成で、詩歌管絃に秀でた平経正の霊をめぐる 『経正』と三保松原が舞台の『羽衣』といった幽玄な物語が、独特の研ぎ澄まされた響きで綴られていく。作曲者本人、指揮者クレマン・マオ・タカス、演出のアレクシ・バリエール、フルート奏者カミラ・ホイテンガが対談形式で内容を紹介する予定だ。サーリアホならではのモダンな美の世界とその創作の秘密に触れる貴重なひとときとなる。カミラ・ホイテンガ ©Maarit Kytöharjuエイヤ・カンカーンランタ©Maarit Kytöharjuカイヤ・サーリアホ大関万結 ©Hiromichi Nozawa下野竜也 ©Naoya Yamaguchi

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