eぶらあぼ 2021.5月号
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47横須賀芸術劇場 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 名曲コンサート「アランフェス」と「ジュピター」を満喫する贅沢なステージ文:山田治生6/6(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jp 最近の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏を聴いて感じるのは、一人ひとりのプレイヤーの積極性である。弦楽器の最後列の奏者まで自信をもって弾いている。2015年から常任指揮者を務めている高関健の薫陶に違いない。 そんな高関&東京シティ・フィルのコンビがよこすか芸術劇場で名曲コンサートをひらく。まずはグリーグの「ホルベアの時代から」。高関自身がヴァイオリンの名手ということもあり、彼の指揮する弦楽合奏は本当に聴きものである。続く、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」では、村治佳織が独奏を務める。彼女は、ギターの神童として早くから活躍し、人気を博してきた。パリに留学し、最晩年のロドリーゴにも会った。しかし、2010年代前半の一時期、病のため、演奏活動を休止していた。復帰後、最近は、オーケストラとの共演も再び積極的に行っている。天性のキレの良さに音楽的な円熟味を増した村治の「アランフェス協奏曲」の演奏がとても楽しみだ。 演奏会の最後は、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。モーツァルトは1788年にこの作品を書いたが、91年に亡くなるまでもう二度と交響曲を書き上げることはなかった。モーツァルトにとっても、これを乗り越えるのは困難であると思うほどの傑作であったに違いない。高関の緻密かつアグレッシヴな音楽が満喫できるであろう。よこすか芸術劇場は、平土間席をバルコニー席が囲む馬蹄形の客席がヨーロッパのオペラハウスを彷彿とさせる。これも大きな魅力だ。雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第25回ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット(サックス四重奏)お昼の1時間でサクソフォンの豊穣なる音色を堪能!文:柴田克彦5/14(金)11:15 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 平日昼間の60分にランチを楽しむノリで本格派の音楽を堪能できる第一生命ホールの人気シリーズ「雄大と行く 昼の音楽さんぽ」に、若き天才・上野耕平が仲間たちと結成した「ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット」が登場する。当グループは、高校時代から知己のあった4人が、2013年、東京藝術大学での再会を機に結成したサクソフォン四重奏団。「レヴ」の名は、エンジンの回転などを意味する「Rev.」に由来している。これまでに全国各地で様々な活動を展開し、CDも2枚リリース。新曲の委嘱、ピアノや邦楽器等との共演も積極的に行い、同形態のさらなる可能性を追求している。俊英たちの強靭なテクニックや同楽器ならではの繊細な歌心は言わずもがな。彼らの最大の魅力はエネルギッシュで光彩に富んだ音楽にある。また、ソリストとしても活躍するキャラクターの異なる4人が揃った際に生まれる豊潤な色合いも、唯一無二の特長を成している。 今回のプログラムは、ベーシックなフランセの小四重奏曲から、メンバーの出身地の民謡等が連なる稲森安太己「ふるさと狂詩曲」、刺激的な音が交錯する坂東祐大「Mutations: A.B.C.」という特殊奏法も交えた両オリジナル作品やポピュラー・ソングまで実に多彩。なかでも、初披露となるブラームスの傑作「ハイドンの主題による変奏曲」からどのような響きや新感覚がもたらされるのか、大いに注目される。 音楽ライター・山野雄大の話で理解を深めた後に、サクソフォン四重奏の活力と多様性を満喫する……かくも胸躍る昼のひとときは滅多にない。左より:田中奏一朗、宮越悠貴、都築 惇、上野耕平 ©Ohsugi村治佳織 ©Ayako Yamamoto高関 健 ©金子 力

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