eぶらあぼ 2021.5月号
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34秋山和慶(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団古典の愉悦と後期ロマン派の大サウンドで気分上昇文:柴田克彦第633回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉5/20(木)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 5月の新日本フィル定期「ジェイド」は、弾けるソロの妙味と大オーケストラの醍醐味を併せて味わえる好プログラムだ。しかも指揮は秋山和慶、ソリストは伊藤恵、小菅優(共にピアノ)と日本屈指の実力派が揃う。 まずは、2人のソリストの妙技を満喫できる愉悦感満点の名作、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲。今回は、1983年ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ部門での日本人初優勝以来、内外で活躍している伊藤恵と、欧米各地の著名なステージで実績を重ね、近年はベートーヴェン等での成果も顕著な小菅優が、スリリングな競演を繰り広げる。むろん各々個性豊かだが、ザルツブルクのモーツァルテウムで学び、独墺ものが十八番という共通点もある。ならば同じフレーズを交互に弾く場面の多い本作で、いかなる競奏をみせてくれるのか? 大いに楽しみだ。 後半はR.シュトラウスの「アルプス交響曲」。登山から下山までの情景や登山者の感情など、アルプスの1日を描いた音の大パノラマである。本作は何と言っても、12本のホルン他の金管バンダやオルガン、ウインドマシーン等を含む超巨大オーケストラのサウンドが聴きもの。最近各パートに名手を加えた新日本フィルのパフォーマンスへの期待は大きい。また秋山は大作の造作に定評があるだけに、全体の構築も要注目。ここは今年80歳を迎えた大ベテランが、丹念かつ見通しよく聴かせてくれるに違いない。 協奏曲は明朗で愉しく、交響曲は開放的でスペクタクル。聴けば気持ちも明るく上向きになること請け合いの本公演で、日頃の憂鬱を豪快に吹き飛ばそう!伊藤 恵 ©大杉隼平神奈川県民ホール オープンシアター2021音楽でめぐる世界の旅 ガラコンサート世界のオペラ、バレエ、オーケストラの名曲を一気に体感文:加藤浩子5/30(日)14:00 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-arts.or.jp※その他イベントの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 私たちの生活を激変させた新型コロナ。当たり前だったことが難しくなった一つが、海外旅行だ。けれど音楽という「翼」は、私たちの心をそれが生まれた国へと連れていってくれる。 神奈川県民ホールの「音楽でめぐる世界の旅 ガラコンサート」は、そんな「音楽の翼」を体験させてくれる好企画。大小のコンサートやギャラリーで構成される「オープンシアター」のメインイベントだが、さまざまなジャンルから、「国籍」を意識した作品が選ばれているのがポイントだ。19世紀のパリを席巻したオッフェンバックの愉快なオペレッタ《天国と地獄》、ウィーンっ子を魅了したモーツァルトのメルヘンオペラ《魔笛》からの二重唱、ロシアの星チャイコフスキーの大傑作「ピアノ協奏曲第1番」、スペインが舞台の大活劇『ドン・キホーテ』を題材にしたミンクスのバレエと、さまざまな国の雰囲気が味わえる。水先案内人は、バリトン歌手としてコンサートにも参加する宮本益光。ユーモアと音楽愛に溢れたナビゲートは、子どもから大人まで虜になること請け合いだ。オペラやバレエを得意とする上野正博の指揮と神奈川フィルハーモニー管弦楽団、地元神奈川出身のチャーミングなソプラノ横森由衣、人気と実力を兼ね備えたピアノの外山啓介、東京シティ・バレエ団の佐合萌香や吉留諒など出演者の顔ぶれも華やかである。 開演前のステージ見学や、終演後のバックステージツアーが予定されているのも嬉しい。名曲が導く「世界の旅」に加えて、ホールという「場」の楽しさもぜひ体験していただきたい。小菅 優 ©Marco Borggreve秋山和慶上野正博横森由衣佐合萌香宮本益光

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