eぶらあぼ 2021.5月号
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98CDCDCD藤倉大:Akiko’s Piano 広島交響楽団2020「平和の夕べ」コンサートより/下野竜也&広響アート・オブ・ヴィオラ/店村眞積&練木繁夫ソングズ・ウィズアウト・ワーズ/ローナ・マギー大河ドラマ 青天を衝け オリジナル・サウンドトラックⅠ/尾高忠明&N響藤倉大:ピアノ協奏曲第4番「Akiko’s Piano」/ベートーヴェン:カヴァティーナ(弦楽合奏版)/マーラー:歌曲集「亡き子をしのぶ歌」/J.S.バッハ(齋藤秀雄編):シャコンヌ(管弦楽版)下野竜也(指揮) 広島交響楽団 萩原麻未(ピアノ) 藤村実穂子(メゾソプラノ)ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番、第2番/シューマン:おとぎの絵本/ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ店村眞積(ヴィオラ)練木繁夫(ピアノ)シューベルト:ファンタジー ハ長調、「12の歌」より〈挨拶を送ろう〉/上林裕子:クリスタルの時/ヴィラ=ロボス:この道/プーランク:フルートとピアノのためのソナタ/ヴィターリ:シャコンヌ/タファネル:アレグレット グラジオーソ 他ローナ・マギー(フルート)石橋尚子(ピアノ)佐藤直紀:青天を衝け、青天の志、血洗島の三人衆、学問の世界、渋沢の藍玉、終の将、家康の部屋、誓い、烈公、友、家族、藍色の手、目利きの小僧、青天を衝け 紀行Ⅰ 他尾高忠明(指揮) NHK交響楽団三浦一馬(バンドネオン) 他収録:2020年8月、広島文化学園HBGホール(ライブ)ソニーミュージックSICX-10011 ¥3300(税込)マイスター・ミュージックMM-4089-90(2枚組) ¥4400(税込)ナミ・レコードWWCC-7940 ¥2750(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84116 ¥3300(税込)被爆から75年の節目の広響「平和の夕べ」コンサートの模様を収めた1枚。原爆で亡くなった河本明子の愛奏ピアノ(修復された被爆楽器)にインスパイアされた藤倉大の協奏曲が柱となっている。緊張感漂う中にも柔らかなこの曲を、萩原麻未が鮮烈かつ美しく奏で、明子のピアノで弾いたカデンツァではとりわけ強いインパクトを与える。当曲から「カヴァティーナ」への移行がまた絶妙。「亡き子をしのぶ歌」の藤村実穂子の深い歌唱や、「シャコンヌ」の迫真性も胸を打つ。下野竜也&広響も真摯な好演。記録的な意義はもとより音楽的にも傾聴すべきアルバムだ。 (柴田克彦)ヴィオラを代表する名作たちの魅力と、40年以上にわたりヴィオラ界の先頭に立ち続けてきた名匠の至芸が、幸福な合一をみせる。店村眞積が、長年の盟友である練木繁夫の美しくも意味深いピアノとともに、ブラームスとショスタコーヴィチ晩年の名ソナタに改めて臨む。前者における渋くも瑞々しい感性、謎めいた後者の意外なほど自然体な温もり、シューマン独特のロマン性。巧みにしなやかに、作品ごとの味わいを引き出し、しみじみと聴かせる。昨年9月、ウイルス禍中の収録で、人同士のアンサンブルを愛してやまない店村の熱い思いが、録音からも自ずと感じられよう。(林 昌英)ピッツバーグ響の首席フルート奏者を務めるローナ・マギー初の国内アルバム。豊麗な美音と卓越した技巧による滑らかなフレージングが実に素晴らしい。アルバムタイトルに「Songs without words」とある通り、歌謡性の高い、あるいは歌曲を編曲した作品が含まれるが、圧巻はプーランクのソナタ(殊に第2楽章)と冒頭のシューベルトであろう。ここでの豊かな情感の発露には演奏者がライナーで述べる「演奏する曲はすべて“歌詞のない歌”なのです」との言葉の最良の実践がある。末尾に1曲目のシューベルトで作曲者が引用した「挨拶を送ろう」が置かれ、見事な円環を成す。 (藤原 聡)幕末から昭和まで激動の時代を生き、“日本経済の父”と呼ばれた男の生涯を描くNHK大河ドラマ第60作サントラ盤の第1弾。手掛けるのは『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞した佐藤直紀で、大河は『龍馬伝』以来2度目の抜擢。テーマ曲では渋沢栄一を育んだ藍玉づくりと養蚕で知られる血洗島(埼玉県深谷市)の風景と、彼の壮大な生き様を表現。「青天の志」や「渋沢の藍玉」、そして「藍色の手」といった楽曲が映し出す“爽やかな青”のイメージが主演の吉沢亮の佇まいとも重なる。三浦一馬のバンドネオンが奏でる紀行音楽も聴きどころだ。(東端哲也)CD

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