50トリトン晴れた海のオーケストラ 第9回演奏会厚い信頼を寄せるソリストとともに再始動!文:飯尾洋一6/5(土)14:00 第一生命ホール 4/6(火)発売問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 「晴れオケ」こと「トリトン晴れた海のオーケストラ」が帰ってくる。晴海の第一生命ホールを拠点に、コンサートマスター矢部達哉のもとにメンバーが集った室内オーケストラ。指揮者を置かず、室内楽の延長のような自発的なアンサンブルが特徴だ。本来であれば、2020年6月に「第九」でベートーヴェンの交響曲シリーズの掉尾を飾るはずであったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、公演は延期されてしまった。 その「晴れオケ」が6月5日、久しぶりとなる第9回演奏会を開催する。曲はモーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》序曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(独奏は小山実稚恵)、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」というウィーン古典派プログラム。もともとはベートーヴェンの交響曲シリーズ完結後に、さらにソリストを迎えてベートーヴェンの協奏曲を演奏しようと考えて組まれたもので、矢部と小山の相互の信頼から実現した。18年以来の交響曲シリーズを通してベートーヴェン像を練り上げてきた「晴れオケ」と、近年、演奏会やレコーディングを通して集中的にベートーヴェンに取り組んできた小山。両者の間にどのような化学反応が起きるだろうか。 なお、ベートーヴェンの「第九」は、21年11月の第10回演奏会で披露される予定。「晴れオケ」によるベートーヴェンの旅は終わっていない。ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団新たな視点で描くタケミツ、バルトーク、ブラームスの世界文:江藤光紀名曲全集 第167回 5/15(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール東京オペラシティシリーズ 第120回 5/16(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 昨年末には隔離期間を経て東響の「第九」に登場、強い音のメッセージを残してくれた音楽監督のジョナサン・ノット。最近もスイス・ロマンド管弦楽団の音楽・芸術監督の職を期限なし(!)で更新し話題を提供してくれたが、5月には再び来日し待機の上、予定の公演に加え2回の特別演奏会を指揮するという。前回、予定が合わず涙を飲んだ人も、今回は多彩な演目に溜飲が下げられそうだ。コロナ禍でもやることがいちいち憎い。 さて、東響の本拠地ミューザ川崎シンフォニーホールで行われる「名曲全集」では、タイプの異なる3曲を組み合わせたプログラムを指揮する(同プログラムは東京オペラシティシリーズでも披露)。 1曲目は武満徹「鳥は星形の庭に降りる」。20世紀アートに強烈な足跡を残したマルセル・デュシャンには後頭部を星形に刈り上げた写真があるが、武満はこの写真に接した後、鳥の群れが五角形の庭に降りる夢を見た。その体験に基づいた本作は、後にタケミツ・トーンと呼ばれることになる、息の長い甘美な音響がきざしている。 続くバルトーク「ピアノ協奏曲第1番」の独奏には、ピエール=ロラン・エマールが登場。ノットとエマールはいずれもブーレーズが設立した驚異の団体アンサンブル・アンテルコンタンポランを古巣とし、現代ものにはとりわけ鋭利なアプローチを見せる。明快な音響の中で激しいバーバリズムが爆発するバルトークの協奏曲の生命力を、二人が東響とどう煮詰め音にしていくか。 後半は打って変わってブラームスの交響曲第2番。ノットのタクトがオーケストラの分厚いサウンドを彫琢して生み出すスリリングな造形美に、心ゆくまで身を委ねてほしい。小山実稚恵 ©Hiromichi Uchidaトリトン晴れた海のオーケストラ ©大窪道治ピエール=ロラン・エマール ©Marco Borggreve + DGジョナサン・ノット ©T.Hidaki
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