eぶらあぼ 2021.4月号
52/129

49大野和士(指揮) 東京都交響楽団近接する時代の中で生まれた2つの傑作を聴く文:飯尾洋一都響スペシャル 4/25(日)14:00 サントリーホール第925回 定期演奏会Bシリーズ 4/26(月)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 4月の東京都交響楽団定期演奏会Bシリーズと都響スペシャルの指揮台に立つのは、音楽監督の大野和士。ショスタコーヴィチの交響曲第1番とマーラーの「大地の歌」を組み合わせた興味深いプログラムが組まれた。 時代を代表する交響曲作曲家という点で、マーラーの後を継いだのがショスタコーヴィチ。マーラーは9番目の交響曲として、二人の独唱者を要する交響曲「大地の歌」を作曲した。半ば連作歌曲としての性格を持ち、しかも歌詞は李白らの漢詩に基づいている異色作は、「いったい交響曲とは何なのか」という疑問を抱かせずにはおかない。一方、ショスタコーヴィチはレニングラード音楽院の卒業制作として交響曲第1番を作曲した。外観こそ4楽章制の器楽作品という交響曲の定型を踏まえているものの、ショスタコーヴィチ自らが「グロテスク風交響曲」と呼んだように、その中身はアイロニーや歪んだユーモアで満たされている。ショスタコーヴィチは第一歩から交響曲のあり方を問うような作品を書いている。マーラー「大地の歌」の初演は1911年。ショスタコーヴィチの交響曲第1番初演は1926年。両者の隔たりは、案外と近い。 「大地の歌」ではメゾソプラノの藤村実穂子とテノールのニコライ・シュコフが独唱を務める。世界の檜舞台で活躍してきた藤村と、オーストリア出身でパリ・オペラ座やザルツブルク音楽祭にも出演するシュコフ。二人の実力者によるマーラーは大きな聴きものとなりそうだ。トッパンホール ランチタイムコンサート Vol.109周防亮介(ヴァイオリン) 美しき光と影の世界俊才の美しき妙演を瞬く間に体感文:柴田克彦4/14(水)12:15 トッパンホール ※事前申込制問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com トッパンホールの「ランチタイムコンサート」は、2002年から続く若手演奏家の登龍門的シリーズ。目利きのトッパンの審美眼で選ばれた俊才たちが、お昼時に45分ほどのステージを展開する。鈴木優人、河村尚子、三浦文彰、宮田大ほか、過去の出演者には現在最前線に立つ演奏家が目白押し。すなわち聴衆には将来のスターの妙演をいち早く知る喜びがある。 4月に登場するのはヴァイオリンの周防亮介だ。1995年生まれの彼は、ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールなど数々のコンクールで入賞し、すでにパリ管弦楽団や国内の多数の著名楽団と共演している実力者だが、当ホールには初の出演。今ここで“弦のトッパン”が指名した点が興味を駆り立てる。また、短時間で魅力をアピールせねばならぬ当コンサートは、プログラムにセンスや持ち味が凝縮される。今回の演目は、イザイの「悲劇的な詩」とサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番。ベルギーの大家によるロマン濃厚な佳品と、ベルギー出身の名手マルシックに献呈された闊達かつ甘美な名品という、フランス=ベルギー派テイストの選曲に個性が反映されている。周防はとにかく音が美しく、流麗にして繊細な中にも芯の通った演奏を聴かせる。その特徴は両曲にピッタリだ。加えて、師の迫昭嘉との2台ピアノによるベートーヴェン(リスト編)「第九」の共演など多彩な活動を行い、トッパンホールでも実績のある有吉亮治のピアノも注目点。特にピアニストにとって超難曲のサン=サーンスのソナタ─なかでも息をもつかせぬ終楽章のコラボ─が実に楽しみだ。 お昼に短時間で本格的作品と期待の才能を味わえる本公演に、ぜひ目を向けたい。©TAKUMI JUN藤村実穂子 ©R&G Photographyニコライ・シュコフ大野和士 ©Fumiaki Fujimoto

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る